麻倉怜士のデジタル閻魔帳:HD DVD、3つの敗因 - ITmedia D LifeStyle
麻倉氏: HD DVDの関係者に話を聞いていると、敵のBDに対し、生産を含めて「“難しく実現性がない”技術である」という確固たる信念を持っているように感じました。確かにBDはまったくの新しい技術ですし、生産も困難でした。しかし最初はそうだったかもしれませんが、技術というものは次第に洗練され、進歩していくものです。液晶も開発した米RCAは事業に成功しませんでしたが、シャープは成功しました。プラズマも最初はどこも成功しませんでしたが、90年代に入り富士通が成功にこぎ着けました。
(中 略)
ライバル技術に対する冷静なジャッジが行えず、技術革新を信用できず、既存技術の延長に自分たちの世界をつくってしまったことが第2の敗因でしょう。「BDはできっこない」を前提にすべてを考えてしまった過ちです。
人間は、私利、私欲、私怨が入ると冷静に物が考えられなくなるものですが、それでも誰か社内に「本当にそれでいいのか?」と声を上げる人はいなかったのですかね?
録画時間についてはおいてといて、
麻倉氏: 東芝は2007年秋、アメリカ市場でHD DVDプレーヤー「HD-A2」を99ドル(98.87ドル)という超低価格で販売しましたが、これが最終的な破たんを招きました。
(中 略)
購入者は高性能DVDプレーヤーとしてしか利用せず、99ドルでしかプレーヤーを買わないユーザーが1枚35ドルのHD DVDソフトなど買うはずもありません。
そりゃ確かに。 そう考えると、米国でHD DVDが返品される確率は少ないのでしょうね。 幸か不幸かわかりませんが。
私は昨年、11月の「デジタル閻魔帳」で「東芝はBDに参入すべし」と書きました。近いうちにHD DVDが負けることは確実に予測できまので、早めに提言したのです。その通りの事態になってしまった今、やはり、そのことは東芝に再度、申し入れしたいですね。βで負けたソニーはそこでビデオの世界から去ったわけではありません。悔しさもあったでしょうがVHSを採用しました。またDVD規格の時もMMCDで負けましたが、東芝のSD規格の改良に協力した結果、統一DVD規格ができました。
勝ってデファクト・スタンダードになったライバル規格を採用して、自社ブランドに期待しているユーザー(特にRD信奉者)に迷惑をかけないようにするのは、敗者の義務です。そうしたロイヤリティの高い顧客に対する配慮が西田社長にないのなら、名経営者とはいえないでしょう。
負けた相手の規格に参入するのは、相手の靴を舐めるのに等しい屈辱でしょうね。
でも、そんなのは一時的なものです。 実際の製品で見返してやればいいのではないでしょうか。