海外で稼いだ利益の行方

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海外で稼いだ利益の行方 - 技術経営戦略考 - Tech-On!

このような状況が起こるのは、「税制」の壁があるからです。今、わが国の海外での法人課税は、「全世界所得方式(外国税額控除制度)」と言われる方式によります。「日本の会社があげた所得であれば国内国外を問わず全て日本の法人税率で課税する」という考え方ですが、
 
(1)外国子会社の所得は、それが親会社に配当されない限り課税が発生しない(課税の繰延)
(2)企業が国外で納めた税金を日本国内での法人税額から控除する(外国税額控除制度)
 
ということになっています。本国の法人税率の方が相手国の税率(法人税+配当への源泉税)よりも高い場合は、本国に配当還流すると税率の差だけが課税されます。 このような税制があり、しかも日本の法人税率は、海外の多くの国々に比べて高いのです。そうなれば当然、海外で上げた利益は日本に移転しないで、海外で留保しておこうということになるでしょう。
 
(中 略)
 
先日、ある自動車メーカーの方からお聞きした話です。「日本で開発した車を海外で作り、売って利益を上げても、ほとんどそれを日本に持ってきて次の研究開発に回すことができなくなって困っている」ということでした。多くの利益が「日本国内で投資されないで、海外に留保される」ことは、わが国のイノベーション力を強化する意味では大きなマイナスとなっています。そのことを、メーカーの方々も感じ始めているのです。

例の移転価格税制の問題もありますし、旧態依然とした税制は見直してもらいたいもんです。