’09 正月特集:大林宣彦監督・西原理恵子さん 親子を語る - 毎日jp(毎日新聞)
西原) 私は、子供には何でもいいから物を作る仕事になったらいいなと思っています。大根作るのも、漫画を作るのも、作るのはすごく楽しいから。
つらい仕事がたくさんありますよね。うそをつかなきゃいけなかったり、3時間しか寝られないような。自殺者が3万人を超えたというのは、形を変えた戦争ですよ。すさまじいストレスの中で子供が戦っている。そこに送り込みたくないと思うから、勉強しなさいとか一切言いません。
でも、周りの子は毎日、塾ですね。有名校に息子を入れるには、一番かわいい盛りを全部塾に入れないとおっつかない。これはダメだと思って。でも、食べていくこともすごく大事です。だから、バランスですよね。
大林) 僕たちの世代は何事もないのが家庭でした。でも、西原さんの世代の漫画には家庭内のドラマがある。「毎日かあさん」に出てくる2人の子供ね、あれは僕たちも感情移入できる。子供は変わらないねえ、変わったのは親だねと。その親を変えたのは僕たち親だということが、残念だけど、明確に見える。すてきな作品です。今がちゃんと描かれている。まあ、あの夫婦関係は僕らには理解できないけど。
西原) 私も理解できません(笑い)。
いつも戦争しているアメリカだって、毎年米軍に戦死者が3万人も出ていたら、ものすごい反戦運動が起きるでしょう。 まるで西原さんが現代の与謝野晶子のように思えます。
それはさておき、対談は世代間の違いを浮き彫りにしてくれて面白いです。
大林) 頑固な親の立場に戻って言うと、やっぱり今どきの親は……、あえてそう言いますよ。人のせいにする。社会が悪いからと。僕らの世代は、社会は悪いけど誰も恨まず、自分がその中でどう生きるかを一心に考えた。今の40代は集団で愚痴ってるね。子供がかわいそうじゃない? 子供だって“人格”だぜ、と思う。だから、僕は昔かたぎのじじいとして発言し続けようと思ってます。
西原) うーん。それをしたくないから、女性はとにかく自立する方向に向かうんですね。そうすれば子供を責任持って育てられるから。家から自立しないと、自分の育て方ができないっていう発想になるんですね。
大林) 僕らが親の時代は「親があっても子は育つ」(笑い)だった。僕は、子供は放っておいてもきちんと育つよ、という信頼感だけはあった。今は先生も親も子供を心配し過ぎ。「私がいなきゃ、この子はどうなる」という自信のない親では子供は自立できないよ。
自分は西原さんと同世代なので、現代の母親たちが置かれている状況も大変だろうと思います。
まあ「今の親の親が、子供の育て方を間違えた」とか言っても仕方ないんだろうなと思います。 大林監督とはちょっと違いますが、結局人間は自分で自分を育てるんです。 親は単なる周辺環境の一部です。 親が子供を育てるなんて、おこがましいと思いますよ。
そして、人間は環境に(ある意味過剰に)適応することで生き延びてきた生物なので、現代の若者や子供がこのようになっているのは、本人にとっても親にとっても、ある意味どうしようもないことです。 良くも悪くも人類はそうやって歴史を作ってきたのですから。