また、人により、ストレスの受け止め方は相当の違いがあり、最適なストレス水準は、人によって異なります。この結果、一般には適度なストレスであっても、一部の人にとっては過剰となり、健康(精神的・肉体的)を害することもあります。従って、ストレスの水準が引き上がる都度、いくらかの人は職務に従事する能力を失い、残った人のみが生産に寄与すると仮定します(図4のR線で表示される線)。
すると、この2つの効果の組み合わせにより、経済全体で生産性(E*R)が最大となるレベルのストレスが存在することになります。長期雇用が前提であれば、企業が職務の要求水準(ストレス)を引き上げた際に発生する追加的なコストには、労働者の損失コストが含まれます。このため、経済全体で生産性が最大となるレベルの職務要求水準(S*)が設定されることになります。ストレスに弱いタイプの労働者も含む、平均的な生産性を最大とするポイントでもあります(図4におけるA点)。
しかし、放出が可能な場合、個々の企業はこの労働者の損失コストを負担しなくて済むことになります。このため、ストレスに弱いタイプの労働者も含む、平均的な労働者の生産性を最大とするポイントではなく、ストレスに耐えられるタイプの労働者の生産性が最大(ヤークス・ドッドソンの法則のみにおける最大値、図4におけるB点)となるように、職務要求の水準が引き上げられます(S**)。この結果、さらに多くの人材が放出され、かえって経済全体の平均的な生産性は下がってしまうのです(図4におけるC点)。
興味深い分析だけど、果たして一般化して適用できるものかな?
「また、実際の自殺対策は、原因が多岐にわたっていることを反映し、広範にわたっており、本稿で主張する内容は、そのうち特に97年以降の雇用問題に焦点を当てたものに過ぎません。」とあるように、このモデルで説明できるのは被雇用者と元被雇用者の自殺のケースだけです。
2008年の自殺者数における被雇用者・勤め人の割合は、27.9%しかありません。 無職者は56.7%ですが、高齢者も含まれますので、雇用問題で自殺した人がどれくらいいたのかは、このデータからは不明です。 年齢で層別したデータがほしいですね。