広州自動車ショーで見えた「中国市場で日産がトヨタを圧倒する理由」 なぜ巨大企業が苦戦しているのか/井上 久男 (現代ビジネス) - Yahoo!ニュース
この1年間で4度、中国に取材にやってきたが、来るたびに街が変わるという印象を受ける。街を走っている自動車も変化する。今回、訪中して3日間、トヨタ車をほとんどみかけなかった。
その代わり、日産自動車や韓国の現代自動車の車をよくみかけた。トヨタが中国で苦戦している話は本コラムでも取り上げたが、20日に始まった広州モーターショーを訪れ、その原因がある程度分かった。
トヨタは中国で努力を怠っている。まず、中国の消費者に受け入れられるような商品を出せていない。豊田章男社長は商品を大切にした経営を目指していながら、トヨタは中国市場をなめているように見える。昨年、米国を追い抜き世界1位の市場になった中国で販売を増やせるかどうかはメーカーの生命線なのに危機感が乏しい。(中略)
いずれも欧米など先進国で売っていたモデルをそのまま中国に移したに過ぎない。中国の顧客の価値観に対応するという姿勢が感じられない。
中国で車が一部の金持ちしか買えなかった時代はこうした商品戦略でも売れたが、その時代はとっくに終っており、大衆に車が普及し始めている現状では通じない。中国の自動車の普及状況は、1000人当たり約60台で日本のほぼ10分の1であり、まだまだ成長の糊代がある。
こんな商品戦略をやっていては中国市場で置いてきぼりをくらってしまう。現にトヨタの主力車のひとつ「ヴィッツ(中国名ヤリス)」は中国では「値段が高くて小さい先進国のセカンドカーは中国では不要」と酷評され、日産の同タイプの「ティーダ」に打ちのめされている。2009年は「ティーダ」の約7分の1 しか売れなかった。
ホンダも同じですよね。 北米でウケたモデルを投入するという成功体験から抜けられず、大衆化で爆発的に拡大する需要をキャッチできなかったという訳です。
日産の場合は中国で出遅れていた分だけ、状況の変化に対して正しい対応を取ることができました。
こうしたトヨタの動きに対し、日産の中国市場への対応は謙虚だ。日産は20日、中国で販売を中止していた「サニー」の販売を来年1月から復活させると発表した。中国ではセダンは人気があり、30歳前後のヤングファミリーを狙った商品だという。
こうした顧客層は中国の経済発展とともに拡大している。日本でもかつて、トヨタの「カローラ」がモータリゼーションを牽引したのと同じ構造だ。
新型「サニー」は「マーチ」と同じ「V-プラットホーム」と呼ばれる車の骨格を採用。グローバルセダンという位置づけで日産の世界戦略車のひとつとして育てていく計画。
今後、世界170ヵ国で発売していくが、最も顧客層が多いと見られる中国で先陣を切って発表した。日産は7年前から日本のメーカーではいち早く中国の開発拠点を強化しており、現地のニーズを汲み取った設計にしている。生産拠点は広州工場。価格も最廉価版が8・28万元。
しかも中国のエコプロジェクトに入っており、購入時には3000元の補助金も出る。中国では5-10万元の間車が売れ筋となっているが、そこに照準を合わせた。月間販売目標は約1万台。ちなみに中国のトヨタ車には定価で10万元を切るタイプはない。
日産がインドでのスズキのような地位を確立できるかどうかは不明です。 世界最大の市場となった中国は、1つのメーカーが支配的になれる大きさを超えていますし。