「シニョレッジ」の“魅力”に負けると通貨価値の下落を招く:日経ビジネスオンライン
シニョレッジとは、鋳造した貨幣の「額面」と「原価」(製造原価、場合によっては管理費用と回収費用も含む)の「差額」であり、発行者(通貨当局、多くの場合には中央銀行)が取得する収益と定義されている。この概念は貨幣が誕生した時代から使われている。「シニョレッジ」という言葉自体は、古代ローマの時代から使われているラテン語である。(中略)
例えば、現在の日本の場合を考えてみよう。あくまでも一般的な話であるが、1万円札の印刷コスト(貨幣製造費:財務省造幣局からの売渡価格)は約20円と言われている。単純化していうと、「額面価格-印刷コスト」で約9980円がそのシニョレッジとなる。しかし、通貨の世界はそれほど簡単ではない。 (中略)
日本の紙幣は「日本銀行券」と印刷されている。視点を変えて考えてみると、日本銀行券を含めた中央銀行券は、名前が表す通り、「中央銀行の社債」つまり債務証書(借用書)である。しかも、実は“無利息の国債”と考えられる。国債や社債であったら、期限があり、利息の支払いが発生する。例えば額面 100万円の国債を市中から購入し、その見返りに100万円の日本銀行券を発行すれば、「国債の利息分」が日本銀行の利益となる。国債からは利子を受けるが、通貨には支払利息が無い。これが広義のシニョレッジである。
さらに考えると、日本銀行券(通貨)は“期限の無い社債”つまり返済期日の無い借金とも考えられる。返済の義務がないということは、「実質的には狭義のシニョレッジの定義が有効である」と考えることもできる。
当局(政府と中央銀行)が収入を得る方法は大きく分けて2つある。1つは当然「税金」。もう一つはこの「シニョレッジ」である。歴史的にこの誘惑に負けた当局は多い。
政府ではなく、中央銀行が通貨発行権を保有している場合でも、中央銀行が赤字国債の直接引き受けを始めると、通貨の乱発と財政赤字拡大に歯止めがかからなくなる。すなわち通貨量の急増が通貨価値の減価につながり、内外からの信認を失う。現在のデフレに対する処方箋の一つになるとの見方もあるが、インフレを制御できなくなるリスクも高い。
でも今の円高を、円を売って外国通貨を買うという為替介入で対処できないのなら、いっそ日銀券をバンバン刷って(というか刷るぞというポーズを示すことで)、国の借金を穴埋めしたらどうかと思うのよ。 インフレターゲットは難しいけどね。