貿易黒字が日本の経済成長を抑制している!?

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

足もとの円高は、日本経済にとって最高の追い風! 企業はチャンスを逃さずに、強い競争力を身につけよ ――日本の格付けのパイオニア・三國陽夫インタビュー|DOL特別レポート|ダイヤモンド・オンライン

自著『黒字亡国』でも指摘したが、日本は長らく輸出が輸入を上回る「貿易黒字」の状態が続いてきた。この「黒字」とは、企業が輸出で得た売掛金に当たり、本来なら銀行を通じて為替市場で円に換金されて決済されるものだ。
 
しかし、外貨を円に交換すると円高になってしまうため、それを恐れる日本は貿易黒字を外貨の形で大量に持ち続けてきた。2009年末の日本の対外純資産は266兆円にも上る。このやり方は、ドルが金の裏付けを失い、1973年に世界が変動相場制へ移行したときからずっと続いている。
 
ドルなど外貨を保有することは、米国をはじめとする他国におカネを貸すことに他ならない。海外に持っていった分だけ国内銀行の手元流動性が失われてしまう。黒字を溜め込むと、本来日本に戻ってくるはずのおカネが戻ってこない、別の言い方をすればおカネが回らない状況が続き、結果として国内の経済活動が抑制される。
 
企業活動でたとえるなら、売り上げを立てて売掛金を大量に保有する会社が、現金を回収できずに黒字倒産の危機に直面しているのと同じだ。

とても面白い記事です。

でもどういうこと? 黒字なのに何がいけないのでしょうか?

過去、円高局面になる度に円安誘導を狙って行なわれた金融緩和も、このトレンドに拍車をかけた。黒字が解消されないままで行なわれた貸し出しは、主に輸出企業の設備投資に回り、輸出を加速度的に増やすことになった。その反面、国内需要はますます減り、デフレが進行した。
 
足もとの円高は、日本が海外で稼いだドルを円に交換して、国内に持ち帰る動きが出始めた兆候とも考えられる。円高が進むことにより、輸出が減って輸入が増え、黒字が減る。これは、日本経済にとって現金の回収が進むことを意味している。
 
それは、これまで米国に預けていた自分のサイフを、日本に持ち帰ることだ。国内の購買力が上がり、経済が拡大に転じる可能性がある。そうなると、銀行は貸し出しをしやすくなる。そして、資産価格も上がってさらに銀行の貸し出しが増えるという、成長モードへの循環が生まれるだろう。
 
貿易黒字が累積することは、経済成長にブレーキをかけるのと同じこと。「失われた20年」は、いわばアクセルを踏み込んでも駐車ブレーキがかかったままで車が進まない状態だった。今後日本の黒字が減れば、経済は成長モードに入るはずだ。経済が成長すれば景気対策の財政支出も不要となる。円高は財政健全化にも役立つ。

うーん。 そう言われるとそうかもしれないと思えてくるけど、なんか釈然としないですね。

――自分たちのためにおカネを使うことによって、日本経済が活性化したケースは、過去にあったのだろうか?
 
象徴的なのが、戦国時代から江戸時代にかけての呉服産業だ。戦国時代、大名たちは有事に備えて、自分の城の天守閣に世界で三本の指に入る大量の金銀を蓄えていた。それは経済活動に回らない「おカネ」だった。(中略)
 
その後100年くらいの間に日本の金銀は半減するほど使われ、白生糸の輸入はストップした。当時国内には、まだ黄みがかかった生糸しかなかったが、呉服のニーズが衰えることはなく、白生糸の需要は高かった。そこで自ら工夫を重ねて、自前で白生糸をつくることに成功した。
 
日本製の生糸は、明治、大正、昭和初期を通じて海外に輸出され、日本の近代化の原動力となった。まさに、おカネを使って経済成長につながったケースと言えよう。

確かに貯蓄率の高さが経済成長につながっているかと言われると、むしろマイナスの影響の方が強いでしょうしね。

――とはいえ、輸出企業が多い日本にとって、円高はやはり大きな不安要因となる。足もとの 2011年3月期には、堅調な業績回復を見込む企業が増えており、「円高耐久力」は着実に上がっていると思われる。しかし現状は、コストカットに次ぐコストカットにより、円高で失った利益を何とか穴埋めしているに過ぎない。企業は円高を乗り越えられるだろうか?
 
確かに現状は微妙な局面に見える。しかし、円高で国内産業が潤い始めている一面もあるのは確かだ。80円台の円高なら、120円台の時代に比べ輸入コストが20兆円程度浮いているはず。そのぶん、企業の実質的な所得が増えるため、日本経済全体への追い風は大きいと思われる。
 
一方で輸出企業は、円高をきっかけに輸出代金の目減りを価格に反映できるように独自の技術開発を進め、競争力のある商品を生み出す必要に迫られる。価格設定権を求めれば利益が上がり、企業の採算はコストダウンだけに頼らずに改善できる。円高は「むしろチャンス」となるだろう。
 
――日本企業が競争力を身につけるために、心得るべきポイントは?(中略)
 
米国経済はこの100年間、技術革新で自社の製品を差別化し、高い利益を得てきた。足もとの不況下においても、iPhoneなどが大ヒットしているアップル社をはじめ、強い技術力を持つ企業はたくさんある。おおざっぱに言うと、中国の下請け企業に1台30ドルで作らせ、完成品を300ドルで売っている。生産性の高さは一目瞭然だ。
 
もう1つは、紙代と印刷コストしかかからないドル紙幣と、日本から輸入した高級車レクサスとを交換し、米国にとってはきわめて高い生産性の向上につなげている。
 
しかし日本企業は、アップルのケースで言うところの「30ドルの世界」で利益を出そうと苦心している。そこへ中国をはじめとする新興国も入ってくるので、競争はますます厳しくなる。

先日も同じような論調の記事を読みました。 デフレの元凶は、日本企業のコストダウンにあるというものです。
その記事を読んだときも「そんなバカな」と思ったのですが、三國氏のいう「30ドルの世界」で戦うなという主張はなんとなく理解できます。

バブル崩壊後の「失われた20年」は、なんのことはない、米国との経済戦争に負けたわけではなくて、単に日本人が自縄自縛に陥っていただけなのかもしれませんね。