「もう上れない」と思ったとき、そこからどう下山していくか

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

出世を諦めて下山を覚悟した“マンネン課長”の悲哀:日経ビジネスオンライン

「これ以上、山は登れない」という状況に追いやられた時の精神状態は、「キャリア・プラトー」「中期キャリアの危機」「ミッドライフ・クライシス」などと呼ばれ、40代や50代に誰もが通過する、年齢的なもの、と考えられてきた。
 
米国の組織心理学者エドガー・シャインは、「気が滅入り、落胆した状態。あるいはガソリンが切れて、モチベーションを失った状態であり、彼らは彼らの仕事に興奮を得られず、もし経済的に実行可能なら劇的なキャリア転換さえ夢見る時期である」とし、いわば自分への諦めの感覚である述べた。
 
それまで出世という山を目指すことで、自らの能力を伸ばし、新しい仕事に取り組んできたビジネスパーソンが、ある時に組織のヒエラルキーを最後まで登っていくのは一握りであることを思い知らされる。「これ以上山登りはできない」ことを知った人は、それまでの自分を超えられないのではないかと感じ、無力感に襲われるのだ。

自分はクルマで上がれる五合目までは行きますが、それ以上は上りません。 スキルも気力もないですから。 卑怯ですかね?

でも新しいことを学ぶのは好きですよ。 縦方向じゃなくて横方向には歩き続けていたいですね。

「部下が自分を褒めてくれた。そのことが、素直にうれしかった。それで、自分の職業人生のノウハウを最大限に生かして、部下たちの背中を押すような仕事をしようと思いました。そのためには、部下が何を考え、何をやっているのかを知ることが大事。それでこんなものを作ることから始めたんです」
 
そう言って、男性は一冊のノートを取り出した。ノートの横軸には月曜日から金曜日までの1週間の日付、縦軸にスタッフ全員の名前が書かれていた。
 
「部下たちに、自分から話しかけたかどうかを記録しているんです。課長ですから、部下たちから仕事の報告や相談を受けることはありますけど、1人ひとりに私から話しかける機会を、少なくとも週3回は持とうと決めたんです。私自身、上司から声をかけられると、うれしかったですから、まずはそこから始めようと思いまして」
 
「で、このノートを広げて机の上に置いて、誰もが見られるようにしておけば、『これって何ですか?』って聞いてくる部下がいる。自分のやっていることを“見える化”して部下に見せれば、部下たちが上司になった時の参考になる。私も初めて部下を持った時に、部下とのコミュニケ―ションの取り方に苦労しましたから、何かの役に立てばいいなぁと、思っているんです」
 
こう楽しそうに語ってくれた。
 
部下のために、部下たちが働きやすい職場を作ることが自分の仕事だと考え、それを見える化することで、部下に自分のやっていることを示そうとする。褒めてもらいたいと思うなら、自分にやっていることを見せる努力も必要というわけだ。
 
この男性の「下山」の仕方は、万人に通じる山の下り方ではないだろう。でも、山を下っている本人が、笑顔で、やる気が喚起され、何よりもそれが部下のためになっていることに、意味があるんじゃないんだろうか。

あまりにミエミエなのもどうかと思いますが、「部下の背中を押してやる」というのは良い表現だと思いました。