日本全体で見ても、空洞化した分だけ輸出が減り、貿易赤字が構造的に定着する危険性をはらむ。2011年は原子力発電所の稼働率低下を火力発電などで補ったため燃料輸入が増え、31年ぶりに貿易赤字となったようだ。
そして、貿易赤字国となって最も懸念されるのが財政への影響だ。日本はこれまで、貿易収支と所得収支の黒字で経常黒字を維持してきた。企業の海外投資が活発化し、現地で得た収益を配当金などの形で日本に持ち帰れば、所得収支の黒字額を底上げする効果があるが、所得収支だけで経常収支を支えられるかは予断を許さない。
仮に経常赤字に転落すると、金融機関を中心にほぼ国内で賄っている国債の引き受けにおいて、海外マネーに頼らざるを得なくなることを意味する。そうなると日本の財政問題が一気にクローズアップされ、金利が急上昇するシナリオが現実味を帯びてくる。
円高と騒いでいるのは経団連だけと思っていると、住宅ローンの金利が急上昇してえらい目に合う人もいそうです。
「国債暴落」にどう備えるべきか?|山崎元のマルチスコープ|ダイヤモンド・オンライン
記者「日本の財政状況は、かつてのギリシャよりも悪いとも言われています。たとえば、日本が、現在のギリシャ、そこまで行かなくても、イタリアのような状況になることはないでしょうか。国債が暴落して、円安になって、インフレになって、経済が大混乱するといった可能性はないでしょうか?」(中略)
山崎「国債価格も相場なので、暴落する、ということが絶対あり得ないわけではありません。誰かが売って値下がりして、これに慌てた別の誰かが売る、というようなことが起こると暴落はあり得ます。
ただ、現在のようなデフレの世の中で、国債の利回りが2%や3%もあると、国債で運用したいお金が集まってきてしまうので、なかなか暴落は起きにくい。たとえば、銀行のリスクを評価するときに、国債のリスクを大きく見積もらせるようなルール変更でもすれば、大量の売りが発生する可能性はありますが、政府がこれをやるとは思えない。
結局、国債が暴落するには、かなりのインフレになっていなければならないということでしょう。それは通貨の信認が失われるような状況なので、経常収支の累積黒字が赤字になるような状況が見えてこないと想像しにくいところですが、将来、そうなったとしましょうか。
円安か円高かという問題は、外国の状況にもよりますが、日本の経常収支が巨額の赤字になって、日本が突出してインフレになるような状況が起これば、大幅な円安にもなりますし、お金の購買力が損なわれるので、金融資産を銀行預金に置いておいたような人は、貧しくなってしまいます。
インフレ率が極端に上昇すれば、もちろん国債の利回りも上昇しますし、それは国債の価格が下がるということなので、国債暴落ということです。銀行が破綻する可能性もあります。
原油/LNG輸入の増加の影響がどう出るか、1,2年は様子を見たほうがいいように思います。
記者「それでは、たとえば、現在2000万円持っているとして、将来、こうした『悪い国債暴落』が起きるようなリスクに備えるには、どうしたらいいのでしょうか?」(中略)
山崎「一番大切なことを言うと、『今は備えすぎない』ことが重要です。それは、将来を予想して決めつけることができないからですし、将来を決めつけた行動をとって、大損をする可能性があるからです。(中略)
インフレになると言っても、急に10%や20%のインフレが来るわけではありません。1%、2%、3%……と物価は徐々に上がっていくでしょう。為替の円安も徐々に進むはずです。
金融資産の緊急避難を考えるのは、たとえば、長期金利が3%を超えて上昇し、円安にもなっている場合でいいと思います。危機管理モードに入る為替レートの目処は難しいところですが、たとえば、1ドル120円を超えるような円安が進むようなら、要注意でしょうか。
100円/$台に戻る日が来るのかな? その頃にはもはや、日本に工場は残っていないでしょうが。