日本からはなぜアップルが生まれないのか:日経ビジネスオンライン
御立:例えば今、多くの企業が太陽電池など新エネルギー関係のビジネスに注力しています。しかし、この分野も構造的には液晶パネルなどと変わらない。いずれ供給過剰になり、どこかで液晶パネルと同じように値段が下がっていくでしょう。
ここからは想像力が問われます。1つの企業が引き金を引くことで想像以上に値段が下がる可能性がある。どこかの政府が固定価格買い取り制度を導入し、下がらない可能性もある。複数のシナリオが考えられる中で、自分たちの会社の財務体質はどうか、研究開発体制はどうか。そういうことを見極めて戦っていくことが必要です。
常盤:戦うに当たって重要な軸になるのが“質”です。月並みなモノを作っていたのでは、「同質」の中で優劣を争うことになってしまいます。今は、マーケットにないモノ、他社にないモノを作るという「異質」の優劣が問われる時代だと思います。異質で戦っている企業は、景気や市場動向に左右されることがありません。
御立:異質化は英語で言うと「ディファレンシエーション(differentiation)」。つまり差別化ですね。差別化の方法もいろいろあります。世界で一番規模を大きくする、他社と全く違うモノを作る、サービスも含めたトータルシステムで勝負する…という具合で、モノづくりのベースがある中で、異質なモデルを作っていくという方向で考えれば、まだまだやれることはあると思いますね。
「日の丸」DRAMは最後のメーカーが倒れましたが、液晶パネルについても10年後には同じ状況になっているかもしれませんし、太陽光パネルでも同様ですね。
既存のマーケットに参入するという点では、ホンダの航空機事業が良い例だと思います。
燃費の良いエンジンと効率の高い機体という「違い」を作ったことで、トヨタも成し遂げられなかった航空機事業へ進出することができました。
御立:みんなが在来線を引いているところに新幹線を引く。違う仕組みを作ってしまうという点で、今まではアップルがすごい、と言われてきたわけですが、今後は新興国企業が台頭してくると思います。
常盤:それは間違いないですね。(中略)
御立:その1つのお手本となるのがホンダです。ホンダの「スーパーカブ」は世界中に模倣品を作るメーカーが乱立していますが、試しに中国の模倣品を買ってみたところ、驚くほど安い値段で品質も高いモノを作っている。どうやったら、こんな製品を生産できるのか分からない。そこで、ホンダはその模倣品メーカーに出資し、学んだというんですね。こんな動きが、もっと出てきてもいいと思います。
ところがその教訓を、ホンダ全体で生かしているとは残念ながら言えません。
二四汎でそれぞれバラバラにやっているので、全社的な行動にまで落とし込めていないようですしね。
ホンダの太陽光パネル事業は、果たして「違い」を作り出すことができるでしょうか?