セレナ開発者が語る、ステップワゴンが勝てない理由

行きは自転車、帰りはセレナ。お受験ママにも大好評:日経ビジネスオンライン

F:顧客がセレナを選ぶ最大の理由はどこにあるのですか。
 
角:まずノア・ヴォクシーに対しては“広さ”が挙げられるでしょうね。さっき言った全長100mmのハンディのこともあって、広さはウチが間違いなく優っている。ステップワゴンは現行になって広さはウチとあまり変わらなくなってきた。彼らはおそらくウチの寸法を見て作って来ていますから。あのクルマとの違いはサードシートです。ステップワゴンは初代のオデッセイと一緒で、床下に格納されて巨大なラゲッジスペースができるようになっている。
 
F:サードシートを横に跳ね上げないんですね。うんと広いスペースができるから、それはメリットではないのですか。

大変興味深いお話ですね。 ステップワゴンの開発者は、心して聞いておいた方がよいと思います。

で、なんで床下格納式ではダメなんでしょうか?

角:ミニバンのヘビーユーザーは、サードシートが片方ずつ畳めないとダメなんです。長尺物を乗せて、でも3列目にも人を乗せたいというシーンに対応できない。ステップワゴンの3列目は、畳むと3人分全部がなくなっちゃう。ミニバンを買ったのに、畳んだら5人乗りになってしまう。しかも床下に収納できるようシートをコンパクトに設計してあるから長距離がきつい。実は我々は2代目のセレナで1回失敗しているんです。その時はお客さんに「日産はミニバンの作り方を分かっていない」とさんざん叱られました。
 
F:3列目を畳むとイッキに全部消えちゃうのはマズいと。
 
角:マズいと。ミニバンを分かってないと。

3列目を使ってナンボだろうと。 床下格納を優先してどうする?ということでしょうか。
確かにホンダは、初代オデッセイで床下格納のサードシートで成功しているので、お家芸を採用したんだと思います。
でもタマにしか使わないオデッセイのサードシートと、使い倒すべきステップワゴンのサードシートを一緒にしちゃダメなんでしょうね。

さらに続きます。

角:そうです(笑)。で、シートを横に跳ね上げると、普通は後部座席の側面ガラスの視界が悪くなってしまうのですが、我々はここにもコダワリました。ここにマルチリンクのヒンジを入れて、先代よりも175mm下げたんです。
 
F:椅子を畳んでも3列目の窓が隠れない。
 
角:隠れない。前はもっと隠れてしまっていたのですが、今度のセレナは隠れない。すると乗員の開放感が大きく変わってきますし、例えば自転車を載せるときもハンドルがこのシートの上をスーっと通り抜けて行ける。
 
F:あ、そう言えば私が自転車を乗せた時もそうでした。特に意識はしていなかったけれども、そこまで考えて設計されたのですか。
 
角:もちろんです(苦笑)。ノア・ヴォクシーも3列目はとても良くできていて、本当にレバーを引くだけのワンタッチで足を畳むことから全部自動でできるようになっています。しかし残念ながら跳ねあげた時の位置が高い。すると、例えばライフケアビークルで、車椅子の人を乗せて、隣に介助の人が乗るシーンを考えて下さい。跳ね上げたシートの位置が高ければ外が見えなくなって窮屈に感じてしまう。(中略)
 
角:このセレナをすごく喜んでくださっているのは、お子さんの塾の送り迎えをする親御さんなんです。例えば名古屋周辺とかの地方都市では、行きは子どもが自分で自転車で塾に行って、帰りは遅くなって暗くて危ないから親御さんがクルマで迎えに行くことがあるんですね。その時に自転車を載せて帰るんです。セレナはマルチセンターシートといって、物入れやアームレストになる真ん中の部分を前後に大きく動かせる。これを1列目に置いたまま、自転車の前輪を2列目の間に挟むと、特に自転車を固定しなくてもグラグラしない。
 
F:ああ、あれはすごく便利ですね。僕はまったく同じことをやりました。設計者の思惑通りの行動を取っている(笑)。
 
角:ありがとうございます(笑)。これができるのは今たぶんセレナだけなんですね。

ここまで来ると、もう乗り物というよりもバリアフリー住宅とかと同じですね。


これに対してホンダの開発者の言い分はというと、

【クルマ人】打倒!日産セレナ、燃費改善で逆襲 ホンダ「ステップワゴン」の堀川氏 - MSN産経ニュース

--5ナンバーサイズのミニバンは「ステップワゴン」が先鞭をつけたがセレナやトヨタ自動車の「ヴォクシー」が売れている
 
「少し悔しい思いをしているが、ステップワゴンは後発のセレナやヴォクシーと比較して燃費の面で不利な立場にあり、燃費を改良するのが一番の課題だった。5ナンバーのミニバンはほぼ完成形になったといえるが、視界や取り回し、歩き回れる室内空間など『毎日子育てをしている家族のための改良』をやり尽くした」
 
--他社の強みは何だと分析するか
 
「営業的観点とハードウェアの差だと考えている。例えばセレナの営業は、シートアレンジなど細かい仕様の差をしっかりアピールしている。ホンダも3列目シートの床下収納など他社にない機能があるが訴求が不十分だった。ホンダの車の作り方、考え方を積極的に訴求していく」

とか言ってるうちはウチは安泰だと、日産は思っているでしょうね。