朝日新聞デジタル:太陽光発電の効率、従来の倍以上に 京大が新技術
京大の野田進教授(電子工学)らは、特定の波長だけを取り出す特殊な「フィルター」のような素材を開発した。厚さ6.8ナノメートル(ナノは10億分の1)のガリウムヒ素という半導体の膜を、アルミニウムガリウムヒ素という半導体の膜ではさんだ。
ものを熱すると物質中の電子が乱雑に動き回りいろいろな波長の光を出す性質を利用。2種類の半導体の膜で電子が自由に動けないようにし、波長の幅を特定の領域にとどめる一方で、光のパワーを強くした。
吸収できる波長を増やすために多接合型にするなどの工夫を重ねていたわけですが、光の波長そのものを吸収しやすい波長に変えるという技術のようです。
これは化合物系の太陽電池にも使えるのかしらん?
変換効率40%超の太陽電池もできる? -京大、熱輻射スペクトルを狭帯域化 | エンタープライズ | マイナビニュース
一般に、物質を加熱すると、物質内の電子の動きが活発になり、光を放出するようになり、こうして電子系から発せられた光は、物質内部で再び電子系と相互作用し吸収される。こうした光の放出と吸収は、物質内で繰り返し行われ、やがて熱的に安定した状態に落ちつき、物質から、その温度に応じたスペクトルを持つ光が放出されることとなる。通常、こうした熱輻射は、連続した周波数を持つ電子系と光のランダムな相互作用により起こるために、広いスペクトルを持つこととなる。良く知られるプランクの黒体輻射の式は、すべての波長において熱平衡状態に至った時の熱輻射スペクトルを記述しており、幅広いスペクトルを与えるが、この熱輻射スペクトルが幅広い波長域を示すという特徴は、電子や光などの基本的な性質から生じているため、これを制御することは難しいと考えられてきた。
しかし、これらの原理を逆に、もし物質内部での電子系と光の相互作用が、ある特定の波長のみで起こるように制御することが出来れば、その波長のみで熱輻射が生じると期待されることとなる。つまり、光の放出・吸収が特定の限られた波長域でのみ強く起こるように、電子の状態、光の状態、さらに両者の相互作用の強さを制御することが出来れば、物質の熱エネルギーを狭帯域の熱輻射スペクトルとして取り出すことが可能となるはずであり、研究チームは今回、物質中の電子と光の状態およびそれらの相互作用を制御するための新たな方法を考案した。
具体的には、電子の状態の制御のために「量子井戸」構造を採用し、電子遷移の波長が連続的ではなく離散化されるようにしたほか、周期的な屈折率分布を持つ人為的な光の結晶構造である「フォトニック結晶」を導入し、離散化された電子遷移波長のみで、光が強い共振作用を起こす、すなわち、限定された波長域のみで、電子と光の強い相互作用が起こる構造を考案した。量子井戸材料としては、AlGaAs/GaAsを用い、離散化された電子遷移の波長を10μm程度に設定したほか、同波長域で強い共振作用を得るため、量子井戸構造に直接フォトニック結晶構造を形成し、その周期は、6.5μmに設定した。さらに、同人工物質には、外部から熱エネルギーを与えることが出来るように電線を設けてあり、物質に電気を流すことで、ジュール加熱の効果で熱エネルギーを与え、この際、与えた熱エネルギーが熱対流などで失われないように、物質を真空中に保持するとともに、電流注入用の電線として、電線そのものを介した熱伝導によるエネルギー損失を防ぐため、熱伝導率の低いマンガニン線を採用した。
実際にこの技術を応用した製品が市場に出まわるのは、10年くらい先になりそうな感じですね。
いま太陽光発電を買い控える理由はなさそうです。