トヨタの大幅利益増は継続するか?――シミュレーションモデルによる評価|野口悠紀雄「日銀が引き金を引く日本崩壊」|ダイヤモンド・オンライン
自動車大手3社の売上と営業利益の状況は、図表1に示すとおりだ。つぎの2点が注目される。
第1に、売上高は、各社とも対前年比15%前後の増加で、あまり大きな差がない。ただし、増加率は円安による為替の減価率には及ばない。これは、販売台数が減ったことを意味している。
第2に、営業利益の動向は、会社によって大きな差がある。トヨタが前年比87.9%の増であったのに対して、ホンダは5.1%増に過ぎず、日産自動車は、中国合弁会社比例連結ベースでは2.2%減だ。
このように、「円安を追い風として絶好調」と言われる自動車産業も、詳しく見るとさまざまな問題を抱えているのである。
野口悠紀雄という高名な(一橋大学名誉教授)学者先生、ここでも何度か取り上げてますが、ボケてるとしか思えないんですけどね。
何が「このように」「さまざまな問題を抱えている」のか、これだけではさっぱり分かりません。
第1の論点からして意味不明です。
為替レートは、2012年6月にはほぼ1ドル=80円であったが、13年6月にはほぼ1ドル=100円になった。したがって、減価率は25%だ。仮に、販売台数が昨年から不変であるとすれば、輸出と海外生産の売上高は、25%増加するはずだ。しかし、実際の売上高増加率は、これに及ばなかった。これは、販売台数が減ったからだ。とくに、国内販売の減少が著しい。
このように、自動車産業が直面する基本的な問題は、販売台数の減少だ。今回は、円安進行によって救われたのだが、それがいつまでも続く保証はない。
野口名誉教授は、単価は不変だと思っているのでしょうか? モデルミックスが利幅の少ない小型車へシフトすれば、当然ながら利益率は悪化します。
販売台数が減っているのは日本と中国、欧州でしょうか。
日本は昨年のエコカー補助金の反動で減少幅が大きくなっているだけです。 人口減少で漸減傾向ではありますが、1国の市場としてはそれでも大きいので、これだけメーカーが多くても商売は出来ています。
中国は反日デモの影響で日系メーカーは伸び悩んでいますが、市場全体は2000万台を超えるのではないかと云われるほど伸びています。
欧州は経済危機の影響で落ち込んでいますが、構造的に販売台数が下がり続けるという性質のものではありません。
ですから「自動車産業が直面する基本的な問題は、販売台数の減少」との主張は意味がわかりませんね。
実際に昨年の第一四半期と比べて販売台数は減っているのか? トヨタは1.6%の減少、日産は3.3%の減少、ホンダは減ってません。
これで「売上高増加率が為替の減価率に及ばない」ことが説明できるかというと、そうはいえないでしょう。
第一、同じ記事の図表2の世界生産台数では、トヨタも日産もわずかながらプラスになっています(笑)。
このあと学者らしくシュミレーションと称していろいろ計算してくれるのですが、結論は、
以上をまとめると、つぎのとおりだ。
トヨタの場合、全体の営業利益率がきわめて高い伸びを示したのは、輸出からの利益が高い伸びを示したからだ。台数は増えていないのだが、円安によって円換算の輸出額が増加したためである。
つまり、「トヨタの利益が伸びたのは、海外移転が進んでいないからだ」という皮肉な結果になっている。
そんなことは誰でも知ってるよ(苦笑)。
第1に、仮に円高に戻らなくとも、為替レートが安定的になれば、円安進行による利益増加効果は剥げ落ちて、販売台数減の影響がもろに効くことになる。
第2に、為替レートが再び円高に戻らないとは言えない。(1)昨年秋以降の急激な円安は投機によって引き起こされた可能性が高いこと、(2)日本の物価上昇率が他の先進国より低いので、購買力平価の観点から長期的には円高にならざるを得ないこと、を考えると、円高への転換は大いにあり得ることだ。
とか
また、為替レート自体が変動する。すでに述べたように、今後円高に振れる可能性がないわけではない。そうなると、輸出台数が減少しなくとも、輸出が減益要因になる。実際、トヨタの利益は、リーマンショック後に大きく減少し、赤字となった。輸出依存度が高いトヨタの収益構造は、為替レートの変動によって大きく変動する構造になっているのである。
つまり、輸出に依存することが望ましいとは必ずしも言えないわけだ。トヨタ型の収益構造は、この点でも問題を含んでいる。
笑っちゃうよね。 「再び円高に戻らないとは言えない」とか「今後円高に振れる可能性がないわけではない」とかさ。
何でもそうだけど、あらゆる可能性があるんですよ。 日本国債が暴落して、ハイパー円安が来る可能性も「ないとはいえない」訳でね。
「輸出に依存することが望ましいとは必ずしも言えない」けれど、それがダメだと決めつけることも「必ずしも言えない」んですよ。
野口センセイは日本での製造業の未来を否定していて、介護などサービス業にシフトしろというのが持論なんですよね。
高齢化社会で介護が重要になっていくのは理解出来ますが、「新しく富を産まない」ものに傾注したって経済がよくなるとは思えないのですが。
自動車なんて斜陽産業なんだからという思い込みがあるので、「販売台数は減っていく」とか世界の実態からかけ離れたトンデモ論をぶったりするんでしょう。
ところで「日本の物価上昇率が他の先進国より低いので、購買力平価の観点から長期的には円高にならざるを得ない」ということは、アベノミクスで円安傾向になる→燃料や原料、輸入品を中心に物価が上昇→購買力平価の観点から円安に→さらに物価が上昇→さらに円安にという「インフレ・スパイラル」なるということでしょうか。
インフレの程度問題ですが、「デフレ・スパイラル」からの脱却がアベノミクスの目的なのだとしたら、それは目論見通りということになりそうですね。