コラム:「円安行き過ぎ論争」を無力化する3つの変化=植野大作氏 | 外国為替 | 外国為替フォーラム | Reuters
ただ、為替需給の現実に即して言えば、日本が恒常的な貿易赤字国に転落してしまったがゆえに、毎日市場に持ち込まれる「実需のドル買い超過」が定着してしまっている。結果的に、昨今の為替市場では円高局面で相場が膠(こう)着しやすい一方、円安局面では値動きが増幅されやすくなっている。
種々雑多な市場参加者の坩堝(るつぼ)である外国為替市場は、その性質上、「為替売買の自由度が乏しくて弱い立場にある人達」が困る方向にボラティリティーが高まりがちだ。自らの相場観に応じて特定通貨ペアの売買の別を自由に選べるヘッジファンドや外国為替保証金取引ファンなら、売買のスタンスをコロコロ変更できる。また、「いま手を出したら損をするかもしれない」と思えば売買そのものを休止するのも可能だ。だが、本業継続に必要な外貨決済を一定期間内に必ず行わなければならない輸出入企業は、たとえ当該時点のレベルでドル円を売買すれば損をすることが分かっていても回避できない。
よって、日本が貿易黒字国だった時代は円高局面でドルを安売りせざるを得ない輸出企業がドル安・円高を加速させて自分の首を絞めやすかったが、赤字に転じた最近は、輸入企業のドル買いが円安局面でのボラを上げる悪循環を加速しがちになっている。どんな値段でも必ずドルを買わざるを得ない日本の輸入企業は、国内外の仮需筋にとっては「良いお客さん」にされやすいからだ。逆説的な言い方になるが、日本が貿易赤字国になって円安のマイナス面が憂慮されるような状況になっているがゆえに、需給的には円安が加速しやすい構造になっているのが現実だ。
これは素晴らしい記事です。