小林節・名誉教授「違憲訴訟は政権交代のための手段」

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安保関連法に違憲訴訟を準備 「改憲派」小林節・名誉教授はなぜ「憲法を守れ」と叫ぶのか

――最高裁で違憲判決が出る可能性はどれくらいあると思いますか。
  
難しいでしょう。「統治行為論」の問題がある。不文の確立された憲法判例で、戦争と平和など、高度に政治的な国の存立に関わる歴史的決断は、選挙で選ばれていない裁判官は判断せず、選挙で選ばれた国会議員や政府が一時的な判断をし、最終的には主権者の国民が選挙でけりをつけるという考え方です。私の専門領域ですが、その通り行きたい。
  
最高裁まで争えば4年かかる。4年以内に必ず総選挙が来る。総選挙で勝つために、安倍首相が憲法9条を破壊し、議会制民主主義を破壊したことを国民に思い起こさせる。2016年7月の参院選で、野党共闘の成果が1選挙区でも出れば、やり方を覚えてみんな勢いづく。そうすれば、いつ衆院選が来ても300小選挙区で野党共闘が実現して、4割の得票で8割の議席が取れる。その手段としての憲法訴訟です。私はむしろそっちを念頭に置いて言論戦を戦っているんです。

全ての憲法学者が「安保関連法は違憲」と言おうが、違憲と確定できるのは最高裁だけです。
最高裁が違憲判決を出さなければ(「どっちでもない」というのはあり得ませんので)合憲ということになります。
それがいくら自分の主義信条と違おうとも、「憲法を守れ」と叫ぶ憲法学者は従わなければなりません。

続きです。

――先生はかつて、憲法解釈の見直しによる集団的自衛権の容認を主張しておられました。
 
僕は冷戦時代に学者になった。冷戦時代のソ連は本当に怖かった。憲法やマルクス、レーニンの著作から、国際法違反を承知の上で、他国を軍事侵略してでも共産化すると読めた。緊急事態だから、憲法の解釈を緩めてでも、自衛する方法はないかと本気で考えた。だけど、冷戦が終わった。ロシアは怖くなくなった。アメリカも疲弊した。あとは中規模な親分が好き勝手にやっている戦国乱世の状態。日本は、ちょっかい出さずにちょっかい出されない専守防衛がいちばんいい。
 
北朝鮮のミサイルの驚異なんて、抜けない竹光。日本にミサイルを飛ばしたら個別的自衛権で対応できる。チベット、ウイグルは武装していないから全部中国に取られたが、台湾は日本と同様に専守防衛に徹している。中国は台湾を「武力解放」すると言いながら手が出ない。日本みたいな技術大国、経済大国、人間大国が専守防衛に徹することは極めて有効だという認識に達したんです。「安全保障環境の激変」には、専守防衛で対応できる。これ以上、アメリカの二軍として世界を歩いたら、イスラムの敵となり、かえってテロで危険になる。アメリカのように第2の戦費破産国になって不経済だ。
 
それから安倍首相が官房副長官のころ、財界から、憲法を変えずに解釈で集団的自衛権を解禁できないかと要請が相次いだ。結論として、現行憲法では無理。条文構造から、政府は必要最小限の自衛力しか行使できない。アメリカを助ければ回り回って日本が助かるという軍事行動が集団的自衛権。これは必要と言えなくもないけど、最小限とは絶対に言えない。「無理ですよ」と安倍さんにも直接答えたことがある。

これは酷い。 四半世紀前の湾岸戦争以前に戻れということですね。 これは野党共闘が実現して連立政権が出来たとしても、とてもじゃないですが政策として採用できないでしょう。

社会党が首班を出した村山政権でさえ「自社さ共同政権構想」として「国際連合平和維持活動に積極的に参加」という政策綱領を打ち出しているんですよ。
一度は政権を盗って、その重さを自覚した民主党がそのような政策を取るとは思えません。

米国の国力が落ちて内向きになっているこの時代に、日米安保に守られて専守防衛だなんて、とてもじゃないけど口に出せないですよ。