短期利益追求のツケ

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背水の日産「モノ作り」どこへ (時流超流):NBonline(日経ビジネス オンライン)

日産が早期退職制度の拡大に追い込まれたのは、世界で新車の売れ行きが伸び悩み、国内で生産ラインの稼働率が8割を割り込んでいるからだ。2007年3月期には、日産車体を含む日産グループの国内生産能力が163万台であるのに対し、実績では前の期に比べて12.7%減の119万台の生産にとどまった。その余剰分は44万台に上り、栃木工場の生産能力25万台(昨年時点)をも上回る。
 
クレディ・スイス証券の遠藤功治アナリストは、「1つの国内工場を閉鎖してもおかしくない減産の規模になっている」と指摘する。追浜工場や栃木工場では、生産体制を2シフトから1シフトに減らして対応してきた。だが、それだけでは足りず、ついに早期退職制度の拡大に踏み切った。

販売店は売りやすいクルマから売るものです。 インセンティブは別にして、「工場の稼働率を上げるために、軽よりマーチを売ろう」とは思わないですよ。

国内での生販のギャップは、そのまま登録車と届出車のギャップでもあります。
軽のOEM販売は、自ブランドの販売台数を押し上げ販売店の糧になる効果はありますが、いわばモルヒネみたいなもので、痛みを和らげたものの問題は悪化してしまいました。

でも、それを解決するチャンスはこれまでにもありました。 軽参入を決めた時から自社開発をスタートさせていたら、今頃は第一号車が店頭に並んでいたハズです。 三菱自との提携もしかり。

2005年、日産は三菱自との関係強化を模索していた。三菱自は同年3月期に4747億円の最終赤字に陥り、資金不足から経営危機に直面していた。
 
日産は救済に近い格好で、軽自動車を生産する三菱自の水島工場の買収や資本提携などを探っていたのだ。だが、「利幅の小さい軽のために出資や生産拠点を購入しても、投資の是非を決める尺度であるROIC(投下資本利益率)で20%以上が見込めない」ことなどから、日産は最終的に出資や工場買収を見送ったと言われる。
 
この判断の背景には、「軽は補助的な役割で、新車市場での伸びは限定的なもので終わる」という読みがあった。そこで軽事業は資金的な負担の少ないOEM方式を選んだわけだ。

当時の三菱自は買い時だったから、絶対に資本提携か軽事業買収をすると思ったので、この判断は意外でした。

もう一つのギャップは、グローバルな需要と供給のバランスでしょう。

こうした中、4月26日の決算発表の席上でカルロス・ゴーン社長が明らかにしたのは、2009年をメドに生産機能を新興市場へシフトするという戦略だった。
 
ロシアには2009年に工場を竣工し、年間5万台の生産能力を確保する。さらに同年からインドに日産、仏ルノー、現地資本のマヒンドラグループによる3社合弁工場を稼働させ、2016年頃には計40万台程度の生産を見込む。このうち3分の1に当たる約13万台が日産の生産分となる。タイでは今年、新型SUV(多目的スポーツ車)を投入し生産台数を2万台程度積み増した。

日産の問題は、昔から「必要な時に、必要なリソースを、必要な場所に、過不足なく持つ」ことが出来ていない点にあります。 ゴーン氏は国内2工場を閉鎖するなど、この10年でかなり改善したと思いますが、まだ時間は掛かるでしょうね。 短期利益追求と将来への布石をどう両立するのか見物です。