空気を読めばものづくりはダメになる? - 技術経営戦略考 - Tech-On!
私は、15年間ほど職人気質の強い製造現場で暮らした後に、外資系戦略コンサルティング会社という洋風ロジックの巣窟のような職場に転職したので、両者の実態を見て感じることが多くあります。憎たらしいけれど、ロジックは確かにパワフルです。洞察と直感主導で進め過ぎると我田引水的になる上に、考えの中にモレやらダブりが出て杜撰な仕事になりがちです。考える範囲が限定されて、局所最適のワナに陥る可能性も秘めています。
結局、「勝ち負けオペレーション」という概念には、ロジックの方が適していると実感します。「この答えよりよい答えはない」ことをうまく証明するにはロジックしかないのです。現場では不良対策のような後ろ向きのシーンだけで活用された手法ですが、もともと「勝ち負けより美しいものを作りたいという職人的な風土」の私たちの職場において、業務のあらゆるシーンにほんの少しのロジックの助けがあると品質は飛躍的に改善できます。
例えば、感性と直感で導き出した仮説をそのまま提示するのではなく、それをまな板の上に置き、なぜ自分はその答えに到ったのかをロジカルに考え直してみます。手間のかかるプロセスですが、仕事のアウトプットを緻密化し、プロの仕事といえる水準にまで持っていくには必要な作業だと思います。技術開発を支援する仕事をしていて、こう感じる場面を何度も経験しました。
おっしゃる通り。 でも職人ってのは、大体自分の技術をうまく言葉で説明できないものなんです。
よくKKDとか言われますが、技術が血肉化されていると本人も意識していない思考のパイプラインを通って結論が出てくるので、「なんでそうなるのか」を問われると答えに窮してしまったり。
昔の職人は、弟子にいちいち説明せず「見て覚えろ」「技を盗め」で済んでいたのですが、今は伝統工芸以外は企業内職人がほとんどです。 後進の育成も仕事のうちなので、そうも言っていられません。
プレゼン資料を作るのが上手な人は、物事を図式化、単純化するのがうまいですよね。 でも、職人が職人たる所以は、細部に拘るところにあるのです。 図式化で零れ落ちる部分が我慢できないのですよ。 「神は細部に宿る」というでしょう?
それでもプレゼン名人が職人になることは出来ないので、やっぱり職人の側がプレゼン(ロジカルに説明する)技術を身に着けるしかないんですけどね。