Appleファンの怒りが示す設計思想の根本的な違い

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先日の日経エレクトロニクスの記事が、Appleファンの不興を買ったようです。

Appleファンの怒りが示す設計思想の根本的な違い - 日経エレクトロニクス - Tech-On!

Apple社と日本メーカーの本当の違いは,設計思想にある。Apple社は,「体験の設計」と言われるデザイン手法の申し子にみえる。簡単に言えば,ユーザーが製品から受け取る「体験」に重点を置いた設計手法である。(中略)
 
これまで編集部が解体してきたいくつものApple製品から,私が受けた印象はこうだ。機器を設計する際,Apple社のハードウエア技術者は決して手を抜いているわけではない。想定する体験を達成できさえすれば,それ以上技術的に際立った工夫はしないのである。(中略)
 
Apple社は,Don Norman氏の教えの信奉者であるようにも見える。有名な認知心理学者で,Steve Jobs氏が復帰する前のApple社に勤務していたNorman氏は,「感情に訴えるデザイン(emotional design)」を主張している。デザイナーは,消費者と製品の間に感情的な絆を作り上げるべきとの発想である。これに成功すれば,消費者は製品の様々な欠点を見逃してくれるようになる(関連記事)。Steve Jobs氏が描くMacBook Airのビジョンは,「軽くてフルサイズの体験」で消費者を喜ばすこと。これが消費者に伝われば,有線のEthernet端子がないといった弱点を許容してもらえる,とみなしているのではないか。(中略)
 
私が思わずにいられないのは,Apple社の設計思想の先に見える真実である。自分が買うことができる製品が魅力的な体験をもたらす限り,それを実現した技術は大して重要でないのである。大半の消費者は,技術がすごいというだけで製品をほしくなるわけではない。

その通りだと思いますよ。 その製品に恋してしまえば、「あばたもえくぼ」で欠点なんて気にならなくなる訳で。

結婚(購入)してからも、ハネムーン気分が続いているうちはいいでしょう。 もっとも、そのハネムーンで有線LANアダプターを忘れたりすると、「なんでLAN端子がないんだ!」と腹立たしい気分になるんでしょうけどね(笑)。

maclalala MacBook Air 分解 - 外は無駄なし、中身は無駄だらけ:日経エレクトロニクス分解班

この記事は製造技術に対する見識というものを考えさせる上で大変興味深い。MacBook Air の製造工場でキーボードを留めている30個のネジのうち25個を無くしようと誰かが判断したとしたら Steve Jobs がどんな反応を示すか想像できるだろうか。間違いなくクビが飛ぶ!
 
これらのネジのすべてが(そして「ムダ」とみなされた他のものすべてが)、MacBook Air を実際手にしたとき誰もが感じるあの堅牢さをもたらしているのだ。これは Air 発表の直後の「とても華奢に違いない」という触ったことのないひとからのコメントと対照的なものだ。これは明らかにみんなが小型電子製品に慣れ親しんできたせいだ。小型電子製品は、内部のムダや空間を削ぎ落とし、コストを下げ、その結果もろい感じが残ってしまうという(どうやら)日本の慣行にしたがって作られているためだと思われる。それがまさに MacBook Air のような極薄の製品ではっきりと強調されてしまったというわけ。

こういうのを牽強付会というべきか。
MacBook Airを触ったことがないのでなんとも言えませんが、私の使っているThinPad T61では直接キーボードを固定しているネジは1本(!)だけです。 でも非常にソリッドな感触ですよ。 ThinkPadのキーボードへのこだわりについては、こちらの記事をご参考に。

MacBook Airとほぼ同等な重量、重さのX300の場合はどうなんでしょうね?

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薄くて頑丈のヒミツは?:大和研が誇る「ThinkPad X300」を速攻で分解した - ITmedia D PC USER

背面下部のネジを外し、パームレストのパネルを取り外したところ(写真=左)。キーボードを囲むベゼルと、キーボードユニットおよびパームレストを支える部位は一体化されており、マグネシウム合金の複雑な骨格(Rall Cage)になっている。これにマグネシウム合金のベースカバーを組み合わせることで、薄さと頑丈さを両立している。この仕組みにより、キーボードを囲むベゼルがベース部分から分離していた従来機と比較して、片手で持った際に重要部品にかかるストレスを15%低減したという。

ここまでやるよりは、ねじ30本使った方が安くできるのかもしれませんね。