技術者が非論理的であることの強み

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技術者が非論理的であることの強み - 技術経営戦略考 - Tech-On!

実務に勤しむ技術者は、自分の専門分野における長年の知識やノウハウ、経験や直感によって仮説を無意識の中から引き出しています。いちいちロジックを詰めて答えにたどり着くというような面倒な手順は踏まず、洞察力という自分の暗黙知の跳躍力を駆使して問題解決を図ります。
 
その脳内プロセスは超高速であると同時に、普段の暮らしの中でも常時アイドリング状態で解決のヒントとの照合作業をしています。息子を連れて行った遊園地の観覧車を眺めながら突然閃いたり、湯船に浸かりながら思いついたりするのです。

こう表現するとカッコイイですが、実際は便秘でトイレにこもってウンウン呻っているようなものです。

でも、思考プロセスがブラックボックスだと、人に説明できないんですよね。 芸術家はそれでもいいかもしれませんが、企業で働く技術者に許されることではありません。

技術畑出身のマネージャーが技術者と話をするとき、陥りがちなワナがあります。技術が解かるものだから、技術の中身に関する議論、しかも各論をやりがちです。しかし本当は、技術論ではなく、その部下がどのようにしてそのような結論に到ったのかというプロセス、つまりHowについて議論をすべきなのです。技術の内容については担当者が一番良く知っているわけで、上司がそこは信じるべきでしょう。そうではなくて、どのような論理過程を経てその案が一番よいという結論に到ったかをしつこく追及すべきなのです。
 
論理的に考えるべきポイントは出尽くしていて、それが構造化されて説明できる状態、すなわち漏れなくダブりの無い構造になっているかどうか、という点に関しては技術者同士であれば畑が違っていても議論はできます。ところが実際によくあるシーンは、上司がいきなり各論を始めてしまう現象です。あちこちで聞いてきた情報についてあれこれ確認し始めて、熱いWhat論で満足してしまう。逆に自分の専門外のものであれば「信頼の置ける君の言うことだから信じた」と、ブラックボックスにしてすべてをお任せしてしまう。これもよくあるケースです。

「非論理的な技術者像」の三つの視点(三現主義、習うより盗め、こだわりの美学)は、多かれ少なかれ心当たりがあります。 こういう職人気質が強みでもあり、弱みでもあるということですね。