「トラック」に笑い,「トラック」に泣く

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「トラック」に笑い,「トラック」に泣くビッグスリー - 材料で勝つ - Tech-On!

かつて持っていた強みが環境の変化で弱みに転化するというのはよくある話だが,米自動車ビッグスリーにとってはそれは「トラック」だったようだ。彼らは,かつてはトラックに笑い,そして今,トラックに泣いている。
 
「かつてはトラックに笑い」というのは,80年代から90年代にかけて,ビッグスリーが米国の自動車市場1700万台の半分近くをトラック系に誘導したことを指す。そのうえでプラットフォームの種類を絞って大量生産することにより,1台当たりの利益率を上げて,高収益を達成した。全盛期には1車種当たりの年間生産台数が100万台を超えるものも登場し,1台当たりの営業利益は1万米ドルを超えたという(NBonlineの関連記事)。 (中略)
 
日経ビジネス誌の取材によると,米国のトラック市場を顧客別にみると,4:4:2になるという(11月10日号,「奈落の自動車市場~米ビッグスリー落城前夜」,pp.6~11)。最初の4割が農家,次の4割が建設関係者で,残りの2割がファッションとして趣味で乗る人たちだという。農家や建築関係者は仕事用なので安い標準仕様で十分だと考えるが,趣味で乗る人たちは豪華な装備を付けて単価を引き上げる。これがビッグスリーにとって美味しい市場だった。

この記事はデトロイトスリーの構造的苦境をとてもよく解説していますね。

数年前からフィット(Jazz)などのBセグメントのコンパクトカーが対米輸出されていますが、昔なら「絶対売れない」と言われていたものです。 それだけ北米の消費者の意識も変わっていたのでしょう。

米国は移民国家であり,移民を即戦力として使わなければならないという歴史的な事情からオープン・モジュラー型に向いた組織としての能力(ものづくり組織能力)が醸成された。この能力はトラックと相性が良かったために,米国ではトラック系に比較優位を持つに至った。これに対して,日本では戦後の人・モノ・金がない状況下でクローズド・インテグラル型に向いたチームワークや多能工としての組織能力が醸成され,これがモノコック構造の小型乗用車と相性が良かったために日本は小型乗用車に比較優位を持っている---というのが(筆者が理解する)藤本氏らのアーキテクチャ論のあらましである。

確かにアメリカ人は水平分業が好きですね。 製品もPCのようにデファクトスタンダードを組み合わせるような物を作らせると、非常にうまいです。
日本は家電に象徴されるように、垂直統合型が強いです。

そういえば,『未来予測レポート 自動車産業2009-2025』の著者である田中栄氏と同書の編集作業真っ只中の8月ごろにお話した際,同氏がすでに「米国政府はビッグスリーを潰さず,国の威信をかけて復活させるだろう」と話していたことを思い出した。田中氏が強調していたのが,米国は競争のルールを変えようとしていることである。その新しいルールのキーワードは,「環境」,「エネルギー」,そして「モノ+サービス」による新しいビジネスモデルだという。同氏が予測するに,米国の自動車産業は2015年ごろまで低迷を続けるが,それまでの間,大統領のトップダウンでこれらの競争ルールに徐々に変えていくだろうと見る。

うーん。 内燃機関を捨てる覚悟があれば、それも不可能じゃないかもね。
でも「環境」,「エネルギー」は日欧メーカーに負けている分野なので、よっぽどうまいことルールを変えないと、勝つのは難しいんじゃないかな?