消耗品としての労働者

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「ハケン切り」の品格:NBonline(日経ビジネス オンライン)

ただ、切られることがあらかじめわかっている者が切られつつある現今の状況に、しらじらしくもびっくりしてみせているテレビの中の人たちの口吻に、偽善に似たものを感じているわけです。
 
そもそも原理的に言って「派遣社員」というのは、「切る」ための社員だ。企業の側からすれば、不況に直面した時にいち早く整理できるからこそ、派遣労働者を雇い入れていたはずなのだ。それゆえ、もし問題があるのだとしたら、それは、「派遣社員を切ること」よりも、「派遣社員という雇用形態を容認しているわれわれの社会」のシステムそのもののうちにある……はずなのだが、こういう時に正論を言ってもしかたがない。

本当にそう思うよ。

期間途中の解雇を予定していたいすゞは解雇を撤回したらしいけど、それでもあと数ヶ月して満了になれば、結局は会社を去らざるを得ないんだよね。
もちろん数ヶ月でも猶予があるのは大きいのだろうけど、数ヶ月で現在の経済状況が変わるとは思えない(というか益々悪くなる)のもまた事実だね。

派遣820人「置き去りか」、いすゞ削減撤回で明暗(読売新聞) - Yahoo!ニュース

期間従業員約550人の契約打ち切りを撤回することを決めた「いすゞ自動車」と労働組合との団体交渉が24日、都内で開かれた。
 
同社側から説明を受けた派遣労働者の組合員らは「派遣は置き去りか」と激しく反発。同じ非正規労働者でありながら処遇に明暗が分かれる形となった。期間従業員の組合員も「いずれ解雇されることに変わりはない」と不安を口にした。
 
派遣労働者として同社藤沢工場で3年間勤務してきた山本秀男さん(34)は交渉終了後、期間従業員と処遇が割れたことに、「同じような仕事をする労働者なのに扱いが違うのはおかしい」と憤り、「今後の交渉に望みをつなぎたいが、長引くかもしれず、仕事探しに支障が出る」と不安を隠さなかった。

直接雇用する期間従業員と、派遣会社が派遣してくる派遣社員で対応が違うのは当たり前です。 「同じような仕事をする労働者なのに扱いが違うのはおかしい」という考え方がおかしいと思うんだがな。
雇用打ち切りの「やむを得ない事由」には、当然ながら赤字決算は含まれるでしょうね。


それはさておき、元の記事に戻ると面白いところが満載です。

でも、本当のところ、現行法からすれば、雇用責任の過半は、派遣先企業にではなくて、派遣労働者として彼らを登録している派遣会社にあるはずだ。
 
なのに、派遣会社の責任を追及する論調はほとんど出て来ない。
不思議だ。
 
あるいは、「解雇より先に、なによりもまず役員報酬のカットが第一で、その次が従業員の給与の見直しであるべきだ。解雇という選択肢は最後の手段であるべきなんではないのか」式の、昔ながらの正論も、一向に主張されていない。

大分キャノンは、経団連会長企業ということもあって随分叩かれましたが、そこに派遣していた会社は大きく取り上げられることはありませんでした。 無名の派遣会社を吊るし上げたって、ニュースバリューはないですもんね。

役員報酬や賞与をカットするのはもちろんですが、大金をつぎ込んだ割りに成果が出せない道楽を止めたホンダは、当然のことをしたというべきなんでしょう。

「ハケンの品格」というテレビドラマがあったのを記憶しておられるだろうか。(中略)
 
で、ストーリーの中では「派遣であれ、正社員であれ、仕事がデキる者が勝つのだ」というファンタジーが毎回繰り返される。
 
現実はもちろん違う。
代打でホームラン王になるバッターはいないし、臨時雇いの板前が店長を怒鳴りつけて大丈夫な店も現実には存在しない。(中略)
 
いや、確かに、弱い立場の者が権力者をやっつけるプロットは、昔から大衆演劇の定番であった。落語にも、町人が武士のハナを明かす話はたくさんある。
 
でも、それにしても「ハケンの品格」は、派遣労働者を応援するというよりは、むしろ、派遣労働者が置かれている差別と搾取の現実から目を逸らすことに力点を置いたドラマであった。非正規労働者慰撫企画。防衛機制の材料。ひがむよりは夢を見ようぜ式の。

連ドラは見ないので「ハケンの品格」も知らないのですが、「仕事のできない正社員をクビにしろ!」的な意見は、こういう土壌から生まれてくるのでしょうね。

で、話は労働行政に及ぶわけですが、

私は、フリーター自身が、自らの浮き草の身の上を「フリーター」と呼んで慰めている現状については、その心情を汲んで、特に許してやっても良いと思っている。彼を「プー太郎」と呼ばずに済ませている世間の人々の優しさも、それはそれで素晴らしい態度であるのかもしれない。
 
が、厚生労働省が、「フリーター」などといういい加減な言葉を使ってはいけない。こんなデタラメな言葉を使いながら、いったいどうやって真っ当な雇用行政を執行できるというのだ?
 
「フリーター」というこの曖昧な用語には、「本人の意志で、非正規労働に就いてるわけだから、労働用語で言うところの『失業者』とは別だよね」ぐらいの気分が含まれている。つまり、この言葉を使いはじめた労働省(および後の厚労省)は、若年の失業者について、それを直視する気持ちが無く、また、彼らの面倒を見る責任を感じてもいなかったのである。

確かにね。 でもさ、雇用対策ったって、公共事業以外に有効な方法は発見されてないんだよね。 新産業創出とか言ったって、そんな簡単にできるようなら苦労はしないし。

昔ならブラジルなんかに移民(棄民)したんだろうけどね。 いっそ若年層の失業者には、一人100万円くらいの持参金を持たせて、バンコクやプノンペンあたりに沈めてしまえばどうだろう? 3年間は帰国できないような条件を付けてね。


それにさ、一方では「少子高齢化で働き手がいなくなって、今の現役世代は年金受給もできなくなるかも」とか「介護や看護でフィリピンやインドネシアから労働者を受け入れ」とか言ってるじゃん? 昨年まではアルバイトが確保できなくて、コンビニが困ってるとかの報道もあったし。

大量失業時代なのか、人手不足なのか、ハッキリしてもらいたいものです。 なんか地球が温暖化するのか、寒冷化するのかの議論に似てますね。