「今は“最悪”なんです」 鈴木修・スズキ会長兼社長 インタビュー(その1):日経ビジネスオンライン
それに、スズキの売上高は「取扱高」に過ぎません。たとえばタイヤは、高級車でも軽自動車でも1台につき4本必要、1本5000円 とすると1台で2万円となる。この時、タイヤ取り付け工賃を1本100円とすると4本で400円、タイヤ4本を取り付けた経理上の売り上げは2万400円となる。
しかし、このうち2万円はタイヤメーカーに支払ってしまうため、手元に残るのは取り付け工賃のわずか400円のみですよ。これが、スズキが生み出した付加価値に過ぎない。
これを集計した実質的なスズキの売上高は3000億~5000億円程度で、決して大企業とは言えない。会社の体制を見ても決して大企業ではないんです。
もちろん完成車としての開発費用(=付加価値)があるので、製造工程の付加価値だけではないんですが、それでも図体(売上高)が大きいわりに風邪を引きやすい(脆弱な)自動車メーカーの実態をうまく言い表しています。
GMワゴナー会長をベタ褒めするなど、「とうとうボケてきたか?」と思うこともありましたが、この危機にあってまだまだ健在のようです。
まだまだ続きます。
いまの「減産」問題は、自動車産業にとっては短期的な課題です。それよりも大きな課題は、この10年間で増えたクルマが次の需要につながらない“一度きりの幻”で終わるかもしれない、ということです。
自動車は買い替え需要が大きい商品です。実際、欧州各国では買い替え促進の政策をうつことで、自動車需要を喚起させていますし、そこそこ成功してます。だからこそ、皆さん、いずれは「戻る」と期待をもって見ているんです。各社とも減産し在庫調整に必死に取り組んでいますが、いつかは「戻る」はずだと思えばこそです。(中略)
もしも、ですよ。仮の話ですが、10年間で増えた部分がすべて「一度きりの幻」で終われば、各社とも「兆」単位のスケールでモノが消えます。 2008年前期時点での需要に対応すべく整えてきた世界中の工場、ディーラーの何割かが不要になり、そこで働いてきたヒトの生活基盤が消えます。危機です。
「いつかは戻る」と思わなければ、恐ろしくて眠れないというのが、自動車メーカーの経営トップの本音でしょう。 自分のところだけ生産規模を縮小して、需要が元に戻ってシェアを取られるのが怖いんです。
まだインタビューは続くようですので、楽しみですね。