アベグレンは、日本的経営の特徴の一つとして「lifetime commitment」を挙げた。そこで彼が強調したのは、雇用期間が長いか短いかではなく、企業と従業員の終身における「心理的契約」であった。法的な効力はないものの、一旦雇用関係を結んだ以上は原則として定年まで雇用関係を続ける、という企業と従業員の書かれざる契約であり、この心理的契約があるがゆえ、従業員は忠誠心を持って働くのだと説いたのである。最近の「派遣切り」批判は、「lifetime commitment」の雇用期間の部分のみが日本企業に根付いた結果だといえよう。(中略)
終身雇用を支えているのは年功制度である。年功制度が企業にもたらすメリットは2つある。1つは総体的に人件費を抑えられること。若く実力ある社員に対し、将来の継続的な雇用や賃金アップを約束する代わりに現状の賃金を安く抑えるという仕組みだ。もう1つのメリットは、技術の継承がスムーズに行われることである。年長社員は雇用の継続が保証されることによって、安心して若手社員に自分の技術を継承できるようになる。成果主義的な賃金体系であれば、技術を継承した有能な若手社員が自分に取って代わる労働力となりうるため、年長社員は技術継承に消極的になるだろう。
すべての仕事関係者を「仲間」とする日本の企業文化が年功制度を基盤に持つ終身雇用を継続させてきた。従業員を「敵」とみなす米国型の労働観は、日本には馴染まない。日本では今後も正社員の終身雇用が続くことが理想だと考えている。
いわゆるステークホルダーですが、ここでの「仲間」はもっと「身内」的な捉え方ですね。
米国では労使は敵対するものとして存在します。 その結果が、GMとクライスラーの破綻です。
ただ最近の日本でも、経営側がドライに従業員を扱うようになってきて、「心理的契約=会社へのロイヤリティ」も低下傾向です。 「成果主義は技術継承を阻害する」というのも真実だと思います。
日本的経営の強みを生かして国際競争力を保つためにも、終身雇用や年功序列といった個々の要素ではなく、会社と従業員の関係を再定義することが必要なんでしょうね。