「時間、カネ、ヒトの余裕」は、組織と仕事を腐らせる:日経ビジネスオンライン
水:だってね、GT-Rの開発に着手したのは今から4年前、“日産リバイバルプラン”が終わって、「さあ今度は“日産180(ワンエーティー)”だ」ってやってる頃だぜ。日産180で車種を拡大して売り上げを伸ばそうって時に、貴重な工数をどこの部署が割いてくれるのよ。どこだって出したくない。まして、エース級なんて出してくるわけがないよ。
F:それじゃGT-Rは特別な人たちで開発したクルマではないのですか? 選び抜かれた少数精鋭のスペシャリスト部隊が社長直轄プロジェクトに秘密裏に集まって……。
水:冗談でしょう、そんなもの。GT-Rはスペシャルだから社内の精鋭を集めるなんてさ、外から見た人のイメージでしかない。そもそも、(GT-Rの部品を納入してくれる)メーカーさんに行ったって、「このクソ忙しい時にたかだか月1000台の仕事なんかやっていられない」と言われちゃう。「水野さんとは長い付き合いだけど、1000台程度の仕事じゃちょっと……。回せるリソースも無いのでゴメンナサイ」と、実際に断られているんだもの。ましてや社内の設計においてや、ですよ。
もちろん一芸に秀でたスペシャリストではあるんでしょうが、いわゆる優等生ではないということでしょう。 能力はあるが性格に難があるとか、仕事にムラがあるとか。
こういう本音で話せる人が上司なら、そういう人でもついていくのかもしれません。
日本発“世界最強車”生んだ「運命の邂逅」 日産自動車 水野和敏 56歳 | 達人のテクニック
軋轢は、あった。仕事の激しさに、メンバーがしばしば交代した。神奈川県厚木市のNTC(日産テクニカルセンター)5階の専用ルームは、壁をガラス張りにして厳しい情報秘匿体制を敷いたが、無理に探りを入れてくる“古巣”の部署からメンバーを守る隠れた目的もあった。「口では言えぬくらいひどい目にもあった。俺みたいな人間がいることじたい軋轢。俺についてくるなんて、よっぽどの変わり者だよ」と漏らす水野は、バカになること、耐えることが自分の特性だという。「バカになるっていうのはすごく大事なこと。要するにさ、新しいことをやるっていうことは、今までやってきた人が否定されて、潰されることなんだよ。でも、『水野ならまあ、しょうがない』からスタートすれば、誰も傷つけないですむ」
間近でそのリーダーシップを見続けた鈴木は言う。
「人を思いやるっていうところは尋常じゃないぐらい。その姿勢が凄いですね。いつ誰が何をやっているのか、部下のことを本当に熟知されています」
でもじゃあ水野氏が日産の社長になったらどうなんでしょうね? それでもいつも本音でいられるのかな? 職位が上位になればなるほどしがらみも増えて、本音と建前を使い分けなければならなくなりますからね。
そういえば日産って、車両開発主幹が社長になったことってあるのかな?