それをやるのが技術者っちゅうもんでしょう

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「二律背反」を乗り越えるのが、技術者っちゅうもんでしょう。:日経ビジネスオンライン

貴:続けることが大事です。努力はいっときではなく、積み重ねないと価値なんか絶対に生まれない。サステイナブルを目指すなら、努力の方向として、絶対的な性能の追求はもちろん大切だけど、我々はメーカーなんだから利益の確保も大切です。
 
数百人とかの規模のメーカーだったら別ですよ。でも、マツダには数万人の社員がいます。お客様に長く愛してもらうには、開発する側が、長く作り続けられる体勢を整え、考えなければいけません。
 
その点ロードスターはデミオなどの車種と一緒に作っていますからね。混流生産は、言うのは簡単だけど、実際に工程を組むのは大変ですよ。FFも FRも、さらにはロータリーエンジン搭載車もごっちゃになって流れてくるんですから。それに対応する作業者が最低限の動きで組み付けが出来るよう、それはもう研究し尽くして合理的に出来ています。結果として、デミオとロードスターの組み付け費用はほぼ同一にまで追い込むことが出来ました。それだからこそロードスターをあれだけの価格で売ることが出来るのです。知恵を使って工夫をすれば、会社の規模に関係なく、コストと性能、すなわち楽しさの両立は絶対に出来る事なんです。

S2000が一般道での中間加速でロードスターに負けるというのは、条件によってはあり得ないことではないでしょう。

S2000は「本籍はサーキット」というコンセプトで開発されました。 オープンカーとしてそれが正しいのかの評価は置くとして、マツダのロードスターと同じものを造っても仕方がないとホンダは考えたのでしょう。

HONDA | S2000 | Memories of S2000 ∼ 生産を終えるS2000へのメッセージ ∼ ・ 開発責任者 上原 繁

我々はS2000を、リアルオープンスポーツという、他に類がない、唯一無二のものにしたかった。そうした想いが最初からあり、最後までぶれることなく完成へと至りました。その想いは、「ボディ剛性が低いオープンカーでは、本格的なスポーツカーが出来ない」という一般常識への挑戦だったのです。
 
ですから、S2000の本籍をサーキットと決めました。オープンカーとしてはかなり硬派なポジショニングです。しかも、ただ本格的なのではなく、走って楽しくなければならないと。ドライバーに“楽しい”という感覚を与えることを第一義に考え、そうした性格を与えるべく開発を行いました。

ましてS2000は、ホンダの50周年記念モデルとしての性格も持っていました。 シリーズものではなく単発で終わったのも、仕方ないかもしれません。 それでも改良しながら10年間造ったのですから、頑張った方なのではないでしょうか。

ただ、代を重ねて生産を続けていくなら、S2000のように少量生産の専用ラインではなく、一般のFF車との混流生産が絶対条件です。 その点でマツダは正しい努力を地道に続けていますね。
こういう「ブレない」ところが、マツダの強みではないかと思います。

元の記事に戻って、

「おっしゃることはすごく共感します。しかし大変申し訳ないのですが、今、NAがもし手元にあったら、NCが欲しくなる、とは思えないのです」
 
クルマを借り、長時間のインタビューに応じて頂いた方に、我ながらひどい質問でしたが、貴島氏は即答。
 
「それでいいのです」
「え…?」
「いま、調子がいいNAをお持ちだったら、NCをお求め頂く必要はありません。あれ(NA)がロードスターの原器ですから。しかし発売から21年、NAは寿命が尽きてしまう頃です。その時に、同じ楽しさをお求めになる方に乗り換えて頂くクルマがなくてはメーカーとして申し訳ない。だから、NCは絶対に必要なクルマなのですよ」
 
(中 略)
 
「ならば…本来ロードスターは、NAのサイズで作るべきということですよね。でも、クルマは居住性や衝突安全性を求められてどんどん大きくなっている。やっぱり、もうNAのようなクルマには、私たちは二度と乗ることはできないんでしょうかね?」
 
貴島氏の答えはまたも簡潔でした。
 
「そんなわけはないでしょう」
「え?」
「たとえばNAと同じプロファイルで、衝突安全性をクリアし、より快適に楽しくする。それをやるのが“技術者”っちゅうもんでしょう。マツダはもちろんソレができる、と、私は思うちょりますよ」

なんというか、貴島氏は「理不尽ではない本田宗一郎」って印象ですね。 生まれた年代が違うからでしょうが。

ペーパードライバーの自分ですが、ロードスターに乗ってみたくなりましたね。