永山昌克インタビュー連載 :空気感まで写せるコンパクトなカメラ――シグマ「DP1x/DP2s」開発者に聞く - ITmedia デジカメプラス
――しかし、実際に発売されたDP1は、サクサクとは動かず、画像の書き込みに時間がかかるカメラでしたね。1回撮影し、次の撮影までに7秒くらい待たされます。
桑山氏: はい。最終的には画質を優先し、レスポンスを抑えたからです。それでもなるべくスピードを上げるようにしたのですが、次の撮影までに少し待たなくてはいけませんね。DP1は、一般的なコンパクトカメラのように、シャッターを押せば簡単に及第点の写真が撮れるカメラはありません。時にはうまく撮れず、失敗写真になってしまうこともあるでしょう。しかし、きちんと撮影を行い条件がそろった時には期待以上の絵が得られます。三振をするか、逆転サヨナラホームランを打つか。安定してヒットは打てないが、当たると大きい(笑)。そんな愛すべきカメラだと思っています。
開発責任者自らが、こんなこと言っちゃうところがいいですね。
7秒は掛かり過ぎですけど。
カメラの進化の方向としては、誰でもきれいな写真が簡単に撮れるよう、さまざまな機能が自動化していく大きな流れがあります。そのこと自体、全く否定はしませんが、その一方で、カメラが簡単になりすぎたことで、失われたものがあるのかもしれません。
フィルム時代から多くの写真が好きの人の多くは、良い写真をたまたま撮れたことが、写真を始めたきっかけだったかと思います。最初のころは夢中になってたくさんの写真を撮り、たくさんの失敗を経験したはずです。ピントが合わない、露出が合わないといった失敗があったからこそ、勉強し、工夫をして撮影を行ったと思います。それだからこそ、うまく撮れた瞬間の喜びも大きいでしょう。それに、失敗することだって、それ自体が面白い体験だと思うのです。
DP1は、結果として使いにくい部分があったことは確かですが、われわれの狙いとして写真の原点に帰り、写真を撮る喜びを感じられるカメラを目指したともいえます。ズームも、手ブレ補正も、顔認識も、今流行りのモノは何もなく、一見すごく使いにくく思えるカメラですが、慣れるにしたがって、それが苦にならなくなり、写真を撮ろう、作品を撮ろうと感じていただけると思います。
自分は銀塩時代にそれほど写真を撮らなかったのでよくわかりませんが、「たまに、いい写真が撮れる」というのが病みつきになる原因なんでしょうね。