反射鏡:菅さんは人望がないというのは本当か=論説委員・野沢和弘 - 毎日jp(毎日新聞)
1996年夏、病原性大腸菌O157騒動が連日のように新聞やテレビで取り上げられていた。厚生省(当時)は大阪府羽曳野市の農園が生産し出荷したカイワレ大根が「原因食材として最も可能性が高い」と発表、カイワレを店頭から撤去するスーパーや小売店が続出した。
厚生省は懸命に過剰反応を抑えようとしたが、いったん広がった騒動はなかなか鎮まらない。当時大臣だった菅さんがカイワレ大根をカメラの前で食べるパフォーマンスを見せ安全性をアピールすることになった。
が、そのカイワレがない。若手官僚が10人以上かり出されて東京都内のスーパーを探し回ったが、どこに行っても見つからない。猛暑の中、汗をかきながらカイワレを探し回るエリート官僚たちを思い浮かべるとこっけいだが、業界団体にとっては死活問題である。
結局、都内では見つからず農林水産省の売店を通して埼玉県から取り寄せた。いよいよ大臣室にカイワレが山盛りの皿とサラダボウル二つが用意された。記者やカメラマンを招き入れようとした時だ。テーブルにあったドレッシングを見た菅大臣の顔が曇った。
「ゴマは好きじゃない。しょうゆドレッシングにしてくれ」
ネクタイにワイシャツ姿の菅大臣、15分で3パックのカイワレを食べた。「なかなかピリッとしてうまい」と笑顔をふりまいたが、猛暑の中を駆け回ってきた官僚たちは言葉が出なかったという。カイワレを探し回った官僚の一人は言う。「安全をアピールするのが目的なんだから、ゴマでもしょうゆでもいいじゃないですか。小泉(純一郎)さんだったら黙って食べてくれたと思いますよ」
場を和ませるために冗談めかして言ったのなら良かったんでしょうが、管の場合は本気で言ったんだろうと思います。 個人の好き嫌いなんて、まったくどうでもいい状況なんですけどね。
では長妻前大臣とどちらが人望がないのか。
厚労官僚に人望がないという点では長妻昭前厚生労働相であろう。在職中はことあるごとに省内から批判や不満が漏れてきた。上司として仕えるのはどちらが良いか、くだんのカイワレの官僚に聞くと、すぐに答えが返ってきた。
「それは菅さんでしょう」。部下に対して少々厳しくても、人間性に問題があっても、理念がしっかりあってやりたいことが明確な上司なら官僚は本能的に仕事をするという。
今の菅さんに「理念」や「やりたいこと」が明確だとはとても思えないが、たしかに鳩山政権の時と比べたら厚労省の力の入れようは格段に違う。主要閣僚の秘書官にはエース級の官僚を付け、省を挙げて社会保障の立て直しに臨もうという意気込みは感じる。それだけ社会保障が断崖絶壁に立たされているということでもある。(中略)
好きじゃない上司とでも「理念が明確なら仕事はする」という官僚を存分に使いこなして危機を乗り切るべし、である。
どっちもどっちという気がしますけどね。