40-59歳人口の減少は、 日本経済に大きな影響を与えた|野口悠紀雄 人口減少の経済学|ダイヤモンド・オンライン
総人口が2008年から減少に転じたのは事実である。しかし、減少率は、年率では0.1%程度と、絶対値ではかなり小さな値だ。
しかし、特定年齢階級の人口推移を見ると、経済活動との関連が強い階層が見られる。それは、40-59歳層だ。その年齢階層の人口増加率を、総人口増加率とともに【図表3】に示す。
40-59歳層の人口増加率が1985、86年に落ち込んでいるのは、戦時期に出生率が急減したことの影響である。これを除いて考えれば、80年代前半には年率2%台後半の率で増加していたのだが、90年代に入ってから伸び率が低下したということができる。これは、日本経済の盛衰とほぼ同じ動きである。そして、90年代後半から伸び率がマイナスに転じた。2007年からは年率1%を超える減少を示している。
40-59歳層の人口を実数で見ると、1995年に3654万人だったのが、2009年には3328万人と、約1割減少した。総人口はこの間に1億2557万人から1億2751万人へと、むしろ増えていることに注意が必要である。
このように、経済活動に影響していると考えられるのは、総人口の変化よりも、40-59歳層の人口動向だと考えられる。
面白いグラフだね。 確かに子供が減るより、可処分所得が多い中高年が減るほうが、経済的にはインパクトがあるのかも。
バブル期だって、一番元気だったのはオッサンとギャルだったもんね。 87年から89年の40-59歳人口の伸び率を見ると、バブル景気の原因は中高年の増加だったのかもと思います。
でも同意できない部分もあります。
「自動車に対する支出が増大するのは、内需が増えることだから、望ましい」とされる。実際、政府は、エコカーに対する税制措置や補助金まで出して、購入を支援した。自動車に対する支出が増えれば、自動車メーカーの立場からは確かに望ましいだろう。しかし、それが国民生活を豊かにするかどうかは、疑問である。自動車が増えれば自動車事故も増えるし、騒音や大気汚染も増えるからだ。
それに対して、「医療費や介護費用の増加は望ましいことではなく、むしろ抑制すべきだ」と考えられている。しかし、医療費を支出することで命が助かるなら、それは望ましいことだ。また、介護サービスの中には、より多額の支出を行なうことによってより快適なサービスを受けられるものもあるだろう。だから、考えようによっては、自動車に対する支出よりも国民生活を豊かにするとも言える。そうだとすれば、国民生活を豊かにし、かつ内需を増加させるために、医療・介護の支出を増やすべきだという議論ができるはずだ。
それにもかかわらず、実際には、「自動車支出は増やすべきで、医療・介護費用は抑制すべきだ」とされている。このように奇妙な結果が招来されるのは、前回述べたように、供給主体と費用負担の仕組みが、この2つの分野で異なるからである。
自動車の供給主体は民間企業なので、その立場からの声が強く政策に反映し、「支出を増やすべきだ」ということになる。それに対して、医療・介護の場合には、供給主体の声があまり強くない。しかも、費用負担は公的な保険を通じてなされる部分が大きいため、保険運営者の立場から、支出を抑制すべきだとされるのである。
以上述べたことをまとめれば、次のようになる。1980年代以降現在に至るまで、総人口はほとんど不変の状態が続いた。しかし、年齢別の構成は大きく変化した。全体的に見れば、若・中年者が減る半面で、高齢者が増えた。とくに重要な変化は、40-59歳層の人口の増加率が90年代以降大きく低下し、90年代後半からマイナスになったことだ。
総人口はほぼ変わらなかったので、本来であれば支出の総額は減らず、消費の構成が変化するはずだった。すなわち、若・中年者の減少に伴って住宅、自動車、電機製品などの需要が減る一方で、高齢者の医療や介護の支出が増えるはずだった。しかし、実際には、医療や介護は公的な保険制度を通じて供給される部分が大きいため、支出が抑制された。このため、高齢者による潜在的な支出増が現実化しなかった。これらのサービスについては、超過需要が満たされずに残されている。他方で住宅、自動車、電機製品などへの支出は現実に減ったので、これらの供給主体が生産を減少させることとなり、日本経済が停滞することとなった。
仮に日本の産業構造が変わって自動車メーカーの声が弱くなれば、「自動車も医療・介護も、内需という点では同じだ」という当然のことが理解されるようになるだろう。また、医療や介護で公的保険でカバーされる部分が減れば、「支出の増加は必ずしも抑制すべきものではない」ということが理解されるだろう。
つまり、現在日本が抱えている問題は、人口構造の変化に経済構造が対応して変わっていないことに起因する部分が大きいのである。
個人的にはスクラップインセンティブや、エコカーに対する減税などはいらないと思っています。 EVに対する補助金もです。 ハイブリッド車はリーマンショック前までは、補助金なしでやってきましたし、技術革新による低コスト化などメーカーの自助努力でできる底力はあると思いますので。
「医療支出を増やすべし」となれば、高度医療など医療費の高騰を招きます。 それが払える裕福な高齢者はいいですが、年金で細々と暮らしている人も大勢います。
もし自己負担比率を減らすなら、保険料や消費税のアップは避けられません。
労働集約的な産業に支出を増やすくらいなら、むしろ移民でも受け入れた方が健全かもしれませんよ。