理系首相に腕力なし

東日本大震災:政府対応も後手に 東電と連絡本部設置遅れ - 毎日jp(毎日新聞)

原子炉の異常は、11日午後の大震災発生直後から始まった。首相周辺によると、東電と経済産業省原子力安全・保安院などは「大丈夫です」と惨事には至らないとの見通しを官邸側に伝え、首相はいぶかったという。
 
12日未明、官邸に呼ばれた班目春樹原子力安全委員長が「水素が発生する可能性はありますが、大丈夫です」と説明。理系分野に詳しい首相は「水素があるなら爆発はあり得るだろう!」と声を荒らげる場面もあった。
 
政府高官によると、12日午後、1号機での水素爆発発生後、官邸側が原子炉格納容器内の圧力を下げるために圧力弁(ベント)を開けるよう求めても、東電側は放射性物質の放出を嫌って難色を示し、海水による冷却を受け入れたのも同日夜。官邸関係者は「東電は何についても楽観的、消極的だった」と東電の責任を強調する。
 
「東電がちゃんと情報を上げてこない」。首相は相次いで会談した野党党首らにも不満を漏らしたが、被災現場の対応は東電に任せ続け、結果として炉心溶融と高濃度放射能漏れ、原発の安全性への国際的懸念という事態を招いた。(中略)
 
元防衛省幹部は「原発と大震災の二正面作戦は戦後最大の危機。災害対策基本法に基づき、直ちに『災害緊急事態』を布告すべきだ」と指摘した。

「意合って、力足らず」といいますが、菅首相も危機意識は持っていたみたいですが、結果から言われれば何も出来なかったと言われても仕方ないですね。

『災害緊急事態』というのは、首相が関係自治体と電力会社など公共機関を指揮下におくことができる、「事実上の戒厳令」なんだそうです。
確かにそれぐらいやらなきゃダメでしょうね。

東日本大震災:放水に放射線の壁 ヘリ投入「命がけ」 - 毎日jp(毎日新聞)

この日、菅首相は首相官邸であった緊急災害対策本部で、被ばくの危険を冒して福島第1原発の危機回避に取り組む自衛隊員らに謝意を表した。
 
しかし、陸上自衛隊ヘリで上空から海水を投下して原子炉を冷却する作戦は16日は見送られた。原発上空の放射線量が多く、強行すれば文字通り命をかけることになるからだ。統幕幹部は「命の保証がない。非常に危険な任務だ」と17日以降も放射線量を慎重に見極める姿勢を示す。(中略)
 
もともと防衛省・自衛隊サイドには「我々に原発のノウハウはない。防護服は核攻撃された後でも活動できるようになっているが、(原子炉から放出される)高濃度の放射能には耐えられない」(自衛隊幹部)との慎重論がくすぶる。今回、NBC(核・生物・化学)攻撃に対処する中央特殊武器防護隊が病院などで放射線に汚染された人の「除染」作業に当たっているものの、「原発事故の対応は東電と原子力安全・保安院にやってもらうしかない」(防衛省幹部)というのが本音だ。
 
「ノウハウを持っているとすれば米軍しかない」(同)と米軍への期待感もあった。それが空母ロナルド・レーガンなど艦船7隻以上を派遣して大震災被災者の救助・救援に協力している米側も、福島第1原発については放射線被害への警戒感を隠さない。15日には消火ポンプ車2台を東電に引き渡したが、地上からの給水活動には加わらず、海上の艦船は原発の風下にならないように配置を変えたりしている。
 
「自衛隊がトライする前に、一番危険な業務を米軍にお願いしますとは言えない」。陸自ヘリをいったん現地に向かわせた16日、統幕幹部はこう語り、「今回は有事だ。最高司令官である首相の判断。『やれ』と言われればやるだけだ」と、隊員の命がかかった首相判断の重みを強調する。

確かにね。 自衛隊の訓練に「暴走する原発を食い止める」なんてのはなかったでしょうから。 及び腰になるのも当たり前です。
それでも「死んでこい」と言わなければならないとしたら... 首相の重責はとてつもないですね。


その一方で、社員を最前線に投入する会社もあります。

東芝、700人体制で復旧支援 福島第1・第2原発  :日本経済新聞

東日本巨大地震で被災した原子力・火力発電所などの復興に向けた東芝の支援体制が16日、明らかになった。グループ全体で830人をそろえ、そのうち700人を福島第1原発、第2原発の対応に充てる。発電所の設計・建設、モーターなどに精通した技術者を中心に組織した。グループの総力を挙げ、電力会社の技術的な支援要請に素早く対応できるようにする。(中略)
 
被災した福島第1原発、第2原発の対応に大半を割く。福島第1原発の現場にはグループ全体で60人を派遣しているほか、東京電力本社や首相官邸にも専門の人材を置いた。福島第1原発への派遣人数は、東電の要請に応じ、すぐに増員できるように準備している。
 
技術者は原子炉格納容器の設計者をはじめ、現場の作業工程管理の技術者、電源確保の専門家など、現場の作業に通じた多様な人材を集めたという。モーターの据え付けやバルブの適切な使い方など、技術的な問い合わせに素早く対応できるようにする。
 
同社は3号機の建設を担当し、詳細な技術情報を持っている。冷却水ポンプのモーターなど、復旧に必要な資機材も順次、現地に送っている。

東芝に入社して原発事業に従事していても、まさか原発が暴走する最前線に駆り出されるとは思ってもいなかったでしょうね。