特別リポート:富士通を覆う閉塞、社長解任の爪跡とガバナンスの行方 | Reuters
富士通は09年9月25日、野副氏の解任当日に開いた記者会見で理由を「病気」と偽った。しかし、昨年3月に野副氏が「嘘の理由で辞任を迫られた」とマスコミに告発したことで、「病気辞任」という説明が虚偽だったと認めた。「(ニフティ売却にからんで)反社会的勢力とのつながりが疑われるファンド関係者との付き合いを注意したが止めなかった。リスク感覚を欠き、社長としての適格性を欠いた」のが真の理由だという。しかし、本当にこのファンド関係者はそうした勢力と関係するのか。
「全く関係がない」とする証言をロイターは得た。昨年12月24日、元セゾングループ代表の堤清二氏が電話取材に応じ、英国に本拠を置くヘッジファンド、サンドリンガム・キャピタル・パートナーズ代表の房広治氏について「長年の友人」と話した。年齢は30歳以上も離れている2人だが、房氏の母校であるオックスフォード大学に付属する英最古の公共美術館、アッシュモリアン美術館の改装に向けて日本での募金活動に堤氏が協力するなど親交を深めてきた。
堤氏は「野副氏が暴力団関係の人と付き合いがあって辞めたと新聞で読んでいたら、暴力団と関係するのが房さんだというので、びっくりした。それは全くの間違いだと思い、山本(卓眞・富士通顧問)さんに、『(房氏は)人間として間違いのない男だと思う』と申し上げた」と語った。昨年6月末だったという。堤氏以外にもロイターは政府関係者を含め複数の関係筋から房氏が暴力団とつながる可能性を否定する情報を得ている。
山本顧問は今年1月4日、ロイターに対し、堤氏と会ったことを認めた。房氏が暴力団とつながるような人物ではないと堤氏が説明したことについて山本氏は「そうしたことは言われた。ただ、私は(房氏とは)面識がなく判定できない」と語った。
房氏については、昨年4月にもWSJが「輝かしい経歴を持つ銀行家」という記事を書いています。
それにしても、根拠のない事由でなぜ社長を解任しなければならなかったのでしょうか? その動機が依然として謎のままです。
ロイターは堤氏から「房氏は暴力団とは無関係」との証言を得られたことを富士通側に伝え、房氏が暴力団と関係するとの疑いの具体的な根拠について説明を求めた。質問は2月24日夜に広報担当者に提出、3月1日午後1時までに回答するよう要請した。
富士通広報IR室から1日、届いた回答は、房氏が暴力団とつながるとの疑いの根拠について「当社が入手した情報の具体的な内容を、司法手続き以外の場で開示することは考えておらず、答えられない」としている。
疑いの根拠について対外的に示すべきとの質問の補足については「進行中の訴訟に関する内容なので、コメントを控える。当社は引き続き、訴訟の場において当社の正当性を毅然と主張していく」と回答した。野副氏との食事や連絡で、出社停止処分や注意を受けた社員がいたかどうかについても「人事上の個別の取り扱いについては、その有無も含めて答えられない」としている。(中略)
野副氏は1月18日、ロイターの取材に応じた。解任に至った真の理由について「推測はあるが本当のところはわからない。構造改革を急激に進めすぎたのかと思うこともあるが、何故、虚偽の情報で辞任を迫ったのか、裁判の過程で真相を明らかにするために、あえて辛い道を選んだ」と話した。そしてこう続けた。
「富士通のようなグローバル企業が、日本に閉じた理屈でコーポレートガバナンスは語れない。世界中のステークホルダーにわかるよう、富士通は説明責任を果たすべきだ」。
野副氏にはぜひ頑張ってもらいたいです。