男たちさえしゃんとしているなら、大丈夫

発信箱:リーダーの姿=笠原敏彦 - 毎日jp(毎日新聞)

ジョン・スタインベックの小説「怒りの葡萄(ぶどう)」が好きだ。大恐慌下の米中西部で、砂嵐の猛威が開拓農民らを襲い続ける。荒れ果てたトウモロコシ畑を前にぼうぜんとし、土地を追われていく小作農の家族ら。それでもくじけずに生きていく人々を描いた次の場面が、ずっと心を離れない。
 
「女たちは、そっと男たちの顔を探った。ほかのだいじなものが、すこしでも残っているかぎり、玉蜀黍(とうもろこし)など、どうなってしまってもかまわないからだ」「女たちも子供たちも、どんな不幸だって、男たちさえしゃんとしているなら、けっして耐えられないほど大きくはないということを心の奥の深いところで知っているのだ」(新潮文庫、大久保康雄訳)
 
困難に直面したとき、「大黒柱」「リーダー」の姿勢がどれほど周囲を安心させたり、逆に、不安にさせたりするものか。英紙の記者が東日本大震災の現場から報じている。がれきの中でも被災者らはあいさつを忘れず、記者はユーモアで迎えられた。漁協の組合長は「将来のことは考えられない。現状に向き合うだけだ」と話し、その気丈さを不思議がる記者にこう答えた。
 
「顔で笑って、心で泣いて」

オトコからすると、女たちのほうがよっぽど強いと思ったりするんですけどね。

人類の長い歴史の中では、カタストロフィーは何度もあったことでしょう。
危機に直面したときでも、男たちの心が折れていない限りは苦難を乗り越えられると、女も子供も本能的に知っているのかもしれません。

男たちよ、がんばろう。