近聞遠見:菅首相に足りないもの=岩見隆夫 - 毎日jp(毎日新聞)
関東大震災の発生が23年9月1日。それから約4カ月後の12月27日、虎の門事件が突発する。帝国議会開会式に出席のため、赤坂離宮から国会に向かう摂政宮裕仁皇太子(のちの昭和天皇)が虎の門交差点で無政府主義者に狙撃されたのだ。
皇太子は無事だったが、山本権兵衛内閣は総辞職、後藤も内相を辞任、警視庁警務部長として警備責任者の任にあった正力は懲戒免職になった。
このあと、正力のもとに、
「読売新聞を買わないか」
という話がくる。正力は先輩の後藤を訪ね、
「10万円貸してほしい」
と頼んだ。88年前だから、いまに換算するとゆうに1億円を超える。
後藤は、即座に、
「2週間たったら取りに来い」
と快諾し、2週間後、ぽんと渡してくれた。後藤は何の説明を求めるでもなく、
「ときに君、新聞というのは非常に難しいと聞いている。やって失敗したら、きれいに金は捨ててこい。返さんでいいぞ。おれが金を出したのを人に言ってはだめだよ」
と念を押しただけだった。正力は読売新聞社の7代目社長に就任、その後政界入りし、56年、鳩山内閣で新設の原子力委員会委員長に就いている。
融資の10万円は、後藤が経済人から借りてくれたものと思っていた。ところが、亡くなったあと、長男が明かしたところによると、父親に、
「正力に約束したから、麻布の5000坪の土地の権利書で金を作ってこい」
と言われたという。屋敷を担保の金だったと知って、正力は号泣する。
すごいねぇ。 貸す方はもちろん凄いのだけど、借りに行く方もすごいよね。
真似しろと言われても出来ませんわ、そんなの。