好調ぶりは利益水準に顕著だ。日産が明らかにした本業の儲けを示す2012年3月期の営業利益見通しは4600億円で、トヨタの同3000億円、ホンダの同2000億円を超えた。その大きな要因が、震災からの復旧スピードの差だった。
ホンダは主力車種のマイコンを新型に切り替えた直後のタイミングで、供給元のルネサスエレクトロニクスの工場が被災し生産停止。その影響がホンダ全体の生産に深刻な影響を与えた。トヨタもそのシェアの大きさから全方位的な対応を強いられた。この2社を尻目に、日産では「5月から前年並みの生産ペースに戻った」と田川執行役員は説明する。
もし為替が90円台まで戻ったら、営業益1兆円は確実でしょうね。
でもなぜ日産は部品不足の影響が軽微で済んだのでしょうか?
ただし、ライバル2社と比べて日産に有利に働いた“固有の事情”があった点には注意する必要があるだろう。田川執行役員が述べた「前年並み」という言葉に、その辺の事情が隠されている。実は昨年9月には中国の合弁会社・鄭州日産汽車有限公司の第2工場が稼働するなど、日産の自動車生産能力そのものが前年比で増えたタイミングだった。
生産予定台数が増加すれば、部品発注も多くなる。つまり、部品発注はもともと、かさ上げされていた。昨夏、日立製作所によるエンジン基幹部品の発注ミスで工場が稼働停止に追い込まれたため、部品在庫を比較的厚めに取る傾向にあったことも、震災の影響を和らげたと見られる。
なるほど。 トヨタやホンダは生産を絞っていた時期ですからね。 日産は元々今期の世界生産を460万台程度に計画していたので、部品の流通在庫も多かったのでしょう。
もちろん単に運が良かっただけでなく、しっかりとした戦略がありました。
UBS証券の吉田達生シニアアナリストは「日産は2011年4~6月期に震災による業績への影響を抑えるため、重点市場である中国と北米市場など向けに部品在庫を優先供給した」と指摘する。こうした施策で、2011年4~6月期における赤字転落を防いだ可能性が高いと見る。ホンダやトヨタが各地域に満遍なく部品を供給し、初期計画の縮小版とする戦略を取ったのとは対称的だ。
非常時におけるシェア喪失を防ぎ、目いっぱいの業績をたたき出すという意味では的を射た手法ではあるが、弾不足が深刻化する重点市場以外の国のディーラーから、反発を招きかねない両刃の剣でもある。
もっとも、取ったリスクに見合う成果はあったと言えそうだ。
ゴーン氏はやはり乱世にこそ輝く人物なのかもしれません。