EVを1台売るより、多くの人にダウンサイジングしてもらう方が、温暖化防止には有効

大企業本社はなぜ「組織的鬱病」なのか:日経ビジネスオンライン

藤本 二酸化炭素削減のために本質的なことは、電気自動車(EV)が増えることではなく、世界のクルマの全走行距離の中に占める、低燃費の走行距離が増えることです。したがって、米国の大型車など、世界中で悪い燃費で走っている車を一刻も早くリタイアさせることのほうが、当面はよほど大事です。しかし、残念ながら今の高価格のEVにその力は無い。
 
たとえば、高い電気自動車を1台買ってもらうより、たくさんの人に3リッターから1.3リッターのガソリン車に乗り換えてもらう方が、地球温暖化対策としてはずっと有効なのです。電気自動車は都市交通システムの中で活用されますので、否定する気は毛頭ないですが、電気自動車を救世主として崇めるようなEV礼賛論は、地球温暖化対策にとっては、他の有効な対策から目をそらせるという意味で、むしろマイナスかもしれません。
 
竹森 世界的に先進国は化石燃料に戻ると思います。CO2を減らすことになると、使う側が節約しなければいけないことになりますね。ハイブリッドもいいんですが、大前提として、1.2リッターで1.5リッターの力がある、小さいまともな普通のエンジンをきちんと作らなければいけないと思うのです。総合的に考えたときに、化石燃料はだめという話ではなく、減らせという話ですから。
 
藤本 全く賛成ですね。現実的な解は、世界中で保有されるクルマが使う化石燃料を強烈に節約していくことであり、EVのように、脱化石燃料だが高くて一般大衆は買えないようなクルマをちょっとだけ売ることは、カッコよくて目立つけれども、地球全体への効果は大きくない。一部のマスコミや識者が展開するEV一辺倒の礼賛論は、地球温暖化防止という大目的からみれば、むしろ本質を見誤っていると言わざるをえません。

もちろん日産なんかは、EVだけでなくダウンサイジングも積極的にやってます。
それにEVの場合は、補助金などの優遇制度次第でコスト問題はかなり変わってきますよね。

EVユーザーの自宅に突撃取材 “電費”に免税、高速料金で「おトク」:日経ビジネスオンライン

F:トク?リーフはおトクですか?車両価格が300と70万~80万円。補助金だ何だを併せても300万円ギリがいいところ。一体いつになったら元が取れるんだ……という感じもするのですが。
 
木:いえ、私のように距離を走る人間にとってはもう完全にトクです。今までのセレナと比較すると分かるのですが、あのクルマの燃費は、平均するとリッター10キロくらいでした。月間2500キロは走るからガソリンは月に250リッター必要でした。
 
F:ひゃあ、月間250リッター。
 
木:はい、レギュラーだとおよそリッター140円ですから、月に3万5000円。
 
F:どわー!月間の燃料費が月に3万5000円!それはバカになりませんね。
 
木:まったくバカになりません。ところがリーフの場合だと、深夜料金を使えば同じ距離を走っても電気代は月間わずかに6000円で済んでしまう。ガソリンとの差は月におよそ3万円です。年間だと36万円の差になってしまう。これは大きい。
 
F:そんなに……。
 
木:もちろんこの値段は電気代を深夜料金プランにしてからのことです。通常の電気料金だともっと割高になってしまいます。しばらく普通の契約でやってみて、使用状況を見ながら今の価格プランに落ち着きました。
 
F:なるほど。電気は深夜料金を利用して……。それだけで5年間乗ったらガソリンと比べて180万円の差になってしまうのですね。確かにこれは大きい。
 
木:もうそれだけでも十分にトクでしょう。さらにEVには税金のメリットがある。このクルマは会社のある神奈川県で買って、神奈川県で登録しているのですが、自動車税が向こう5年間免除になります。買ったときにだけ払う取得税が免除になるだけでなく、毎年払う自動車税も免除になる。
 
F:税金が5年間も免除に……!
 
木:そうです。これは記事に書く時にちゃんと調べて欲しいのですが、多くの県では免除になるのは買ったその年だけだと記憶しています。ところが神奈川県は5年間免除になる。
 
F:うーむ。正しくエコ贔屓(笑)。うーむ……。
 
木:それだけじゃありません。
 
F:まだあるんですか。もう勘弁して下さい(笑)。
 
木:いや、まだまだ(笑)。神奈川県内で高速道路を乗り降りすると、料金を半額戻してくれるのです。
 
F:……まさか、そんな……。
 
木:戻してくれるのは月間最大で5000円なのですが、それでも私のように高速をしょっちゅう使う人にはありがたい。ただ、(東京にある)用賀インターから乗ったんじゃダメなんです。神奈川県にある東名川崎インターから乗らないと。
 
F:それで半額になるのだったら楽勝で行きますよね(笑)。
 
木:そういうことです(笑)。なにしろ半額ですからね。

こういう話を読むと、「EVってトクじゃん」と思うのですが、その優遇策に掛かる費用は国や神奈川県の税金(そう、あなたが払った税金です)から出ているのですよね。
あんたはEV買うより、月に2,500kmも走らなくて済む場所に引っ越した方が、よっぽどエコだろうと言いたくなりますね。

結局のところ太陽光発電と同じで、高額な初期投資ができる人だけが得をして、その人を優遇するためのコストが、それを買えない人々に背負わされるのです。 不条理ですね。


原発停止長引けば…電気料金18%上昇も 12年度試算  :日本経済新聞

富士通総研は20年には電気料金が最大35%上がると試算している。現行のエネルギー基本計画は20年までに9基の原発の新増設を盛り込んでいるが、実現が難しいうえに既存原発の長期停止も続く可能性があるからだ。必要な電力を火力発電や再生エネルギーでおぎなえば、標準家庭の負担は月額で1800円以上増える見込みだ。
 
太陽光など再生エネルギーの利用割合は07年で発電量の1%程度。水力を含めても9%にすぎない。政府は太陽光や風力で発電した電気を電力会社が高い固定価格で全量買い取る制度の導入を検討しているが、これが実現すれば、20年度までに標準家庭で150円の追加値上げになる。
 
福島第1原発の事故に対応して、政府は今国会に原発賠償支援法案を提出した。電力会社など原子力事業者は一定の負担金を求められており、これらも電気料金に転嫁される可能性がある。
 
家計において電気料金は基礎的な支出項目。電気料金が上昇すれば「低所得者層ほど負担が増える」と第一生命経済研究所の永浜利広主席エコノミストは指摘する。
 
例えば電気料金が20%上昇する場合、家族4人の標準的な家庭の可処分所得に占める電気料金の割合は、年収が1000万~1250万円なら0.3ポイント上昇の1.9%になる。これに対して年収400万~450万円の世帯では2.7%から3.3%と0.6ポイント上昇する見込みだ。

今後、電気料金が上昇するのはやむを得ないとは思います。 でも、「EV購入世帯には電気料金を割引」なんて優遇策が出てきたら、かなり頭に来ると思いますね。