後味の悪いTPP参加の意向表明プロセス

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TPP参加の意向表明に至った 「野田プロセス」の嫌な感じ|山崎元のマルチスコープ|ダイヤモンド・オンライン

しかし、今回の野田首相によるTPP交渉参加の意向表明に至るプロセスは、極めて後味の悪い「嫌な感じ」のものだった。「こんな調子で国の重要事項が決まってはたまらない」と思った。

そうそう。 判断の是非よりも、「首相に一任」なんていうプロセスの方が問題だと思います。

そもそも容認派と慎重派の対立も単なるポーズだったのではないかと思います。

確か、前回の党総裁選後に、政調会が党の政策決定に関して権限を持つことが決まったのではなかったかと記憶しているが、今回、前原誠司政調会長は、TPP反対を「TPPお化け」に反応していると揶揄する程度の言辞を弄しただけで、なぜか政調会による方針決定を主張しなかった(彼は、問題が大きくなると逃げる傾向があるように思うが、これは筆者の気のせいだろうか?)。
 
しかも、たちの悪いことに、たとえばTPP反対派の代表格であった山田正彦・前農水相は、プロジェクト・チームの提言に関して、「国民への十分な情報提供を行い、幅広い国民的議論を行うことが必要だ」と明記されたことを捉え、「情報開示と国民的議論ができなければ、政府は交渉参加の是非を判断できない」と述べ、首相はTPP参加の判断ができないとする結論が出たのだと言い張っている。
 
同氏は、野田首相の対外的方針表明を受けてもなお、今回の発表は「TPPそのものへの参加表明ではなく、TPP交渉への参加の意思の表明に過ぎなかったので、安心している」などと述べている。
 
はっきり言おう。民主党のTPP反対派の議員たちが、TPPに本気で反対の立場で真剣に議論し、行動しているとは、到底思えない。全てが選挙区向けだけではないかも知れないが、反対はポーズだけで、実質は「長いものに巻かれる」展開を容認しているのではないか。

その通り! 山田前農水相は裏でグルになっていて、反対運動が過激な方向に行かないようにコントロールしてガス抜きをしているだけだと思います。

TPP参加の是非を、国会議員が次に本当の意味で問題にすることができるのは、条約を批准するか否かの場面になるだろう。
 
一連の経緯をどう解釈すべきか。与党民主党は、国論を二分するTPP問題に悩みに悩み、議論を尽くした上で党首である野田首相に結論を一任し、野田首相にあっても最後まで悩み抜いた末に、やっとTPP参加を決定したのだろうか。
 
違うだろう。TPP参加は、菅前首相の頃からすでに方針として決まっていた。今回の一連の騒動は、いわゆる「ガス抜き」に過ぎず、特に、農業従事者などTPPで損失を被りかねない有権者を選挙区に抱える議員のためのパフォーマンスの場を提供したもので、曖昧な権限のまま検討会合を開き、曖昧な結論でその場をやり過ごすことも予定の筋書きだった、と考える方が、辻褄が合うのではないか。
 
ところで、TPPの参加は、ずっと前から決まっていたとすれば、それは、いつ、誰が決めたのだろうか? これがわからないことは、国民にとってかなり「気持ちの悪い」ことではなかろうか。
 
重要な問題について、実質的にははっきりした権限も結論も出ない会議だけを行なって、スケジュールに合わせて「首相の判断」を出し、なし崩しに官僚の筋書き通りに物事が進む。
 
付け加えると、大手メディアは、これらの経緯を、いかにも実質的な議論が行われて政治家が物事をきめているかのように協賛報道する。しかし、落としどころは、予めすっかり決められている。これが典型的な「野田プロセス」による物事の進み方だ。
 
今回のTPP問題で見られた「野田プロセス」を、消費税率引き上げや、年金改革のような重要問題で、再び発動されてもいいものだろうか。

ちゃんと国民に向き合い説明責任を果たさずに、なし崩し的に物事を進めようとすることは、ある意味で自民党の密室政治よりもタチが悪いです。

どうせ日本国民は怒らないと思っているのでしょう。 太平洋戦争になだれ込んだ戦前の政治状況を思い返してしまいますね。