小学生には、翌日の授業で必要な物をまずランドセルに詰めてから遊びにいくタイプと、当日の朝家を出る直前にバタバタと準備するタイプがいます。いっけん直前に集中してやる当日の朝タイプが効率的なようですが、もし途中で忘れ物に気付いて取りに戻るなどをしたら、結局は余計に時間を費やすことになります。これは大人も同じです。小学生の例をもとに、仕事を前倒しで進めることを私は「ランドセルサイクル」と呼んでいますが、このランドセルサイクルを習慣の中に組み込むことで、漏れ・抜け・無駄が減り、スムーズに仕事が進みます。
私は講演資料やレポートを締め切りの1週間前に一度仕上げることにしていますが、それはなぜか。仕上げた後も内容が気になって、街を歩いたり雑誌を読んだりするたびに「この情報を追加したら説得力が増す」というように、さらに中身を深めることができるからです。
現役の設計者だった頃、自分で描いた図面を検図するのですが、描いたばかりだと「間違っているはずがない」と思い込んでいるのでミスを見逃してしまうことがよくありました。
翌日に自己検図すると第三者的に見ることができて、ミスの流出が減りました。
とはいえ、そんな時間的な余裕が取れる仕事ばかりならいいんですけどね。
では、逆にギリギリのタイミングで仕事を指示されたときはどうすればいいのか。意識したいのは相手の期待値を確認することです。時間に余裕がないときは、相手も漠然とした指示を出しがちです。それをそのまま受け止めて作業を始めると、本当は3時間で済む仕事に10時間かけてしまうことになりかねません。
かといって、ゼロから説明を求めると相手に負担がかかり、仕事を振られた意味がなくなってしまいます。大切なのは、「この仕事の目的はこうだから、ここを押さえればいいですよね」と自分なりの仮説を立てて質問することです。
頼まれごとを受けるときは、必ず「何時までに返事が欲しいか」を確認するようにしています。 忙しいときは「○○時まで時間をください」というようにお願いすることもあります。
必ず締め切りは守りますし、できれば2、3時間前に回答します。 相手の期待したものと違うとマズイですしね。
まわりの協力を引き出すには、いくつか条件があります。まず頭をパラレルに動かすのではなく、毎回切り替えることです。普通は複数の案件が同時進行しているので、前の会議の内容を引きずったまま次の会議に臨むと、的確な指示ができません。
人に仕事を任せるときは、自分のこだわりを棚上げする割り切りも大切です。仕事をする際にこだわりは必要ですが、任せた仕事に関してこだわりを発揮すべきは、自分でなく相手のほうです。にもかかわらず自分のこだわりを押し付けると、相手は振られた仕事に楽しみを見出せず“やらされ感”が増していきます。}
人にはそれぞれ長所と短所があります。それが個性なのですが、考えてみると私は短所を直すことより、長所を伸ばすことでここまできました。ですから相手の長所も尊重しようと考えています。たとえそれが自分のこだわりと違っていても、思い切って任せる覚悟が必要です。
エンパワーメントは難しいですね。 でも最近はイライラせずに、どこでアドバイスしようかと考えつつ見守るようになりました。