日本の「1%対99%」問題

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もう一つの「1%対99%」問題:日経ビジネスオンライン

前回は米国における所得の格差に関して、上位1%対下位99%の格差の問題を述べた。
 
今回は異なる意味での日本の1%対99%の話をしたい。それは国内総生産(GDP)のうち、農業の占める割合は1%であるのに対して、非農業部門生産高は99%だという話である。(中略)
 
したがって、TPPの賛否を論ずる委員会では、最大の問題は農業であるから、賛成派99%の人達と反対派1%の人達で議論するのが合理的なのではないのだろうかと考えたわけである。

農業関係者が聞いたら、怒りのあまり卒倒しそうな論理ですね。

ただそれはあくまで「つかみ」であって、本論はそういう話でありません。

表2における「農家」とは経営耕地面積が10ヘクタール以上をいう。兼業農家の第1種は農業所得を主とする農家で、第2種は農業所得を従とする農家である。なんと、全農家数が1985年から2009年までの間に6割も減少している。しかも2009年に現存する農家のうち、専業農家はその4分の1にも満たない。(中略)
 
次に農業就業者の性別、年齢別に分類した表3を見てみよう。この表から分かることは1985年と2009年を比べると、農家人口も農業就業人口も半分以下になっており、さらにショッキングなことは、男性では働き盛りの15才から59才の割合は1985年の120万人から30万人と4分の1になっていることである。(中略)
 
表4から分かることは、販売農家の半数弱が稲作農家であり、95%が年収300万円以下である。つまり、ほとんどの農家は農業を専業として、経済的に継続していくことが、そもそも困難である。これはTPPに参加する以前の問題であり、これらの農家は兼業農家としてのみ生存が可能と考えられる。(中略)
 
さらに65才以下の専従者のいない割合を作付けの品目別に表したのが、表5である。水稲では65才以下の専従者のいない農家が76%にもなっている。TPPがあろうとなかろうと、これらの耕作地は早期に放棄されることになろう。
 
しかも、表6を見るとその地域に偏りがみられることも明らかになった。地域的にみると、東海、近畿、中国・四国、九州・沖縄では、約3分の2の水田は65才未満の農業従事者がいない。以前にも示したように、生産費が手取り価格を超えている農家の割合は98%に及び、米価が生産費を上回り米作りが生産として成り立つのは、広い耕作地を持つと考えられる北海道だけなのである。
 
これらのデータを見ると、日本の農業はもはや、TPPに参加するかどうかで壊滅的な打撃を受ける段階ではないことが分かる。ずっと以前にその競争力は失われていたにもかかわらず、なるに任せてきたのである。

たとえTPP参加を阻止できたとしても、それで日本の農業が安泰という訳ではありません。 むしろ絶滅は時間の問題だということですね。
だったらTPPに参加して、その利益を農業の強化対策費用に回した方がいいんじゃないかとも考えられます。
でも個人的にはTPP参加の利益って、兆円レベルには遠く及ばないと思うんですけどね。


「疲弊する地方経済」の象徴である農協巡りで見た不良債権: やまもといちろうBLOG(ブログ)

統計と言うと、とても冷たい印象があると思います。全体で見ると何だ2兆6,000億の不良債権か、という話になりますが、そこには何百何千何万もの返済に追われる農家があり、後継者がいないので農業を継続できなくなったり縮小して所得が減り、所得が減ったのでトラクターやらコンバインやら農協から借り入れて買った設備投資も回せなくなっていく。そして、先祖代々預かってきた田んぼや山林を二束三文で売りに出そうとして、それがどこにも需要がないことを知って、80代の農家が自己破産していくわけですよ。休耕田の問題や、地方経済の担い手不足というのは、カネの面から見ると、擦り切れるように磨耗して潰えていく、くたびれた地方経済の持つ不良債権の山となって跳ね返ってくるのです。
 
この問題を最後に取り上げたのは朝日新聞だそうですが、震災の後で象徴的にヤバくなったのが福島県の農業です。風評被害がどうという話ではなく、文字通り福島の農家は四散してしまいました。福島産の農産品が売れないという目先の話というよりは、誰もそこにいなくなった福島の農業の現状です。
 
話を聴いていて思ったのが、買い手のつかない売り農地。政府からの保障がもらえるかどうかというのは、死期が2年か3年先になるだけのことであるのは福島の農家が良く分かっているわけです。低利融資があったところで、それはいずれ返さなければならないおカネであり、貸し倒れてもいいじゃないかと開き直るには実に微妙な金額であることもまた問題で。宮城の二重ローンは大手資本による支店経済ではなく、宮城土着の地場資本を駆逐しておりますが、福島の場合は産業そのものが消滅するんですね。

票欲しさにTPP反対を唱える政治家も、本当に農業を大切に思うなら、持続可能な方策を真剣に考えてもらいたいと思います。