「NSX」復活発表の場で起こった「どよめき」の理由

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ホンダのスーパーカー「NSX」復活決定! 世界発表の場で起こった二度の「どよめき」の真相|エコカー大戦争!|ダイヤモンド・オンライン

さて、「NSXコンセプト」お披露目会見の終了間際、場内に二度目のどよめきが起こった。それは、同車の「製造地」の発表の時だ。3年以内(=2015年まで)に量産を目指し、研究開発をアメリカ中心に行う。さらに、製造は「オハイオ工場で一貫して行う」(伊東社長)とアナウンスした瞬間、場内にどよめきと拍手が同時に起こったのだ。
 
筆者自身も「オハイオ工場での一環生産」を耳にした瞬間、「まさか、そんな手を使うとは!?」と、驚いた。そして「オハイオ工場での一環生産」という言葉に、アメリカ人たちが大いに喜んだことに、筆者はかなり驚いた。会見後、あるホンダ関係者がこう漏らした。
 
「きょうの会見で、オハイオ生産することを発表するかどうかで社内議論があった。だが、会見での大きな反応で見られたように、その発表は正しかったと思う」。ホンダが世界企業としての基盤を築いてきたアメリカの地で、しかもアメリカ自動車産業の中心地デトロイトで、再起を図るために、アメリカ発・世界市場向けの真のスポーツカーを本気で作り上げることを宣言することが重要だったのだ。

寄居はないと思いましたが、またNMCで作るのかな、でも本気かな?と疑問に思っていました。

スポーツカーの主要市場は北米ですから、アメホンがゴーサインを出さなければ「NSX」の商品企画は進みません。 企画から製造まで一貫して北米でやるというのは、アソシエイトの琴線に触れたでしょう。

「北米市場で、トヨタとホンダは互いに意識し過ぎる。その結果、商品がコンサバになってきた。そうした守りの姿勢に対して、リーマンショックで破綻、または大きく落ち込んだ米3社、また韓国系(ヒュンダイ、キア)は、商品として大きく飛ぶことができる。そうした差が最近、ハッキリ見えてきた」
 
確かに、最近のホンダ車は、特に世界戦略車で「飛び感」が少ない。換言すれば、ホンダの商品イメージが世界市場で確立されてきた。そうしたイメージを確立する過程で、各セグメントの商品でトヨタ車に対する強い対抗意識を持ってきた。特に北米市場でその傾向が強い。筆者は過去、北米内の各メーカのディーラーを取材してきたが、この10年間ほど、ホンダとトヨタは販売現場でも互いに強く意識している。
 
こうしたトヨタへの意識について、今回のショーでホンダ「アコードコンセプト」記者発表後に、北米でのホンダ事業本部であるアメリカンホンダの岩村哲夫社長に話を聞いた。「弊社からのアウトフロー(他社への顧客の流れ)では、最もアウトフローが多いのはトヨタだ。弊社と顧客層が非常に似ているからだ。また最近、(トヨタ以外への)アウトフローが少し増えたが、それはフォードと韓国系が多い」(岩村氏)という。(中略)
 
その変化とは、「消費者は他との違いを求めている」だという。つまり、近年の北米市場では「安心できる安全パイ」としてシェアを拡大してきたホンダ、トヨタに対しての「違い」だ。フォードはその「違い」を、「フュージョン」では3つ挙げた。それは、燃費、デザイン、そしてテレマティクスだ。

その「安全パイ」だったハズのモデルがコケるとどうなるのかというのが、新型シビックをめぐる騒動ですね。

北米の販売担当って「俺達が利益の八割を稼いでるんだ」っていう自負が強いし、成功体験もあるから、新しいことをやろうとしないしデザインもコンサバになっちゃうんだよね。

また、ホンダのデザイン関係幹部は「今回のショーでは、フュージョンを筆頭に、米系各社がヨーロピアンなデザインテイストをハッキリ示していた。これが今後、北米市場でのトレンドになるのではないか」という(テレマティクスの北米動向については、本連載の次回で取り上げる)。
 
以上のように、ホンダが近年トヨタの商品を意識し過ぎたことで、北米市場での商品性の観点では、消費者がホンダにコンサバなイメージを持つようになった。そのことを、日米のホンダ幹部は認識している。(中略)
 
近年ホンダは、商品企画の中核に「環境」を据えた。日本市場では、ガラパゴス化が加速し、「ミニバンのホンダ」のイメージが加速した。そうしたなかで、F1撤退、インディジャパン休止など、ホンダらしさのシンボル「レーシングスピリッツ」が薄れてきた。
 
ホンダは世界市場で巨大企業化する過程で、企業イメージの尖った部分の角がとれてきた。だが北米市場では、そうした角が「取れ過ぎてしまいそうな」領域に達している。だからこそ、いま「NSX」なのだ。それを、北米オハイオ工場で生産するのだ。(中略)
 
そうしたなか、アメリカで次期「NSX」を生産するのはホンダの事業戦略上、当然なことだ。なぜなら、需要があるところで生産するのが、最も効率的だからだ。だがそこには大きなチャレンジがある。ホンダの技術を集大成させた高級スポーツカーを、アメリカで一環生産することは、いまのホンダにとって大きなチャレンジであることは間違いない。今回ショー会場内で話を聞いた日米のホンダ関係者数人も「チャレンジの存在」を強く認識していた。
 
このチャレンジング・スピリットこそ、いまのホンダに必要なのだ。ホンダ再起の原動力になるのだ。だから今回、「NSXコンセプト」が登場したのだ。

本当に「原動力」になるのかは怪しいですが、売れ線狙いだけだと廃れてくるので、常に「新しい提案」を持ったクルマづくりをお願いしたいですね。