標準予測のシナリオは、確率の平均値ではない

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「欧州危機でマイナス成長」のシナリオに備えよ:日経ビジネスオンライン

通常我々は、標準予測に対して、上方リスク(思ったよりも景気が好転するリスク)と下方リスク(景気が悪化するリスク)を考慮する。通常の場合は、2%成長が標準シナリオだとすると、これが最も確率が高いと考え、より低い確率でプラス・マイナスに分布が広がって行く。しかし、2012年のリスクは通常の場合とは異なった分布をしているように思われる。
 
上記のように、欧州債務危機が本当の危機に至ってしまうと、その影響は世界経済全体に波及する。その影響はリーマンショック並み、あるいはそれ以上のものになるだろうから、日本経済もマイナス成長を免れないだろう。そしてその確率は結構高そうだ。
 
すると、2012年についての予測リスクは、2%を中心として上下に均等に分布しているのではなく、下のほうに結構大きな確率で「マイナス成長」という可能性が位置しているのである。
 
しかし通常の予測では、この危機シナリオを標準ケースにするのはかなりの勇気がいる。極端に悪い経済の姿を提示することになり、その予測に対するリアクションは相当大きなものになるからだ。前述のように「白か黒か(危機が起きるかどうか)」と問われれば、「白(危機は避けられる)」と答えることになる。しかし、多くのエコノミストはかなりの確率で「黒かもしれない(危機もありうる)」と考えていると思われる。それだけに標準ケースは、「平均的な予想」というよりは、「経済環境が最も平穏であった場合の楽観的な姿」だと考えるべきであり、我々はリスクシナリオについても常に念頭においておく必要があるのだ。

人間はどうしても「希望的観測」で将来を描いてしまいます。
もちろんそうした楽観的な見通しを立てられるからこそ、リスクを取ってチャレンジできる訳ですが、「すべてが上手くいく」ことを仮定にするのはあまりに危険ですね。