3.11後の「オール電化vsガス併用」 軍配は?

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経済性はおいといて、CO2排出量の話ね。
少し調べてみたのですが、古い資料ばかりで見つかりません。

古い資料ですが、以下は押さえておくべきでしょう。

1.「オール電化住宅は地球温暖化防止に寄与するのか?」(特定非営利活動法人 気候ネットワーク)
2.「『オール電化住宅は地球温暖化防止に寄与するのか?』への疑問」(上記への(財)電力中央研究所の反論)
3.「環境面からみたオール電化問題に関する提言(2008年版)」(特定非営利活動法人 地球環境と大気汚染を考える全国市民会議)
4.「日本の家庭からの二酸化炭素(CO2)排出量」(日刊 温暖化新聞)

その解説としては、以下の記事が参考になります。

・「オール電化再考」(安井至氏による上記1.と2.への考察)
・「オール電化は本当にエコか?」(市民エネルギー研究所・真下俊樹氏)


こういう比較で疑問に思うのが、「エコキュートとIH調理レンジを導入してるからといって、暖房をエアコンのみで行なっているとは限らないのでは?」ということです。

マンションなんかではエアコン暖房だと思いますが、一戸建ての場合はエコキュート導入のお宅の前に灯油缶が置いてあったりします(灯油の巡回車に入れてもらうため)からね。

逆に調理と風呂にガスを使っていても、灯油を買いに行くのが大変だからと、エアコン暖房を使っているお家だってあるでしょう。 ガスファンヒーターなんて、あまり使われていないのでは?

「オール電化」の割引を受ける条件は「調理と風呂にガスを使わない」ということなので、暖房については除外(別で議論)するべきじゃないかと思います。


オール電化再考 市民のための環境学ガイド

C先生:最終結論もそのような性格ではあるが、まあ、正確とも言える。オール電化住宅の年間二酸化炭素排出量は、16%ぐらい少ない。
 
A君:気候ネットワークの報告書は、確かに正確性を欠いており、推論の一部も科学的に妥当なものとは言い難いところがある。しかし、恐らく、一般市民が知らない事実の記述を多く含んでいて、この報告書の存在意義はある。オール電化をこれから採用しようとする一般市民は一読の価値あり。
 
B君:ただし、原発には最初から反対の立場の報告書であることは理解した上で読む必要はある。エコキュートを入れたら、「原発のお陰で安く上がっています」と感謝すべきで、「原発に足を向けて寝るのはどうか」、という機器なのも事実。

3.11後のエネルギーミックス(特に電源構成)を前提にしたときに、「オール電化住宅の年間CO2排出量は16%ぐらい少ない」というのは変わっていないのかな?

ちなみにエコウィルも貯湯槽を持ちますが、容量が少ない(現行90L・旧140L、エコキュートは300L~460L)のと、お湯はりをする直前に溜める(エコキュートは12~18時間前)ので、お湯が冷えることによる損失は少ないです。


その後、3.の2012年版を見つけました。 これが一番希望に近い資料です。 エコウィルには言及されていないのが残念ですが。

eco_co2.jpg

環境面からみたオール電化問題に関する提言 2012年版

第5章オール電化に変えた家庭のCO2・エネルギー負荷評価
 
オール電化とそうでない家庭の環境負荷を比較するにあたって、給湯器を含めてオール電化に切替えた家庭について、その前後のエネルギー消費量の変化を比較した。該当する家庭はすべて関西電力管内であるため、全電源平均係数としては、関西電力の2006 年度値を用いた。(中略)
 
5.2. 事例の評価結果
オール電化に変えた家庭について、エコキュートに変えた家庭2 軒、電気温水器に変えた家庭2軒のそれぞれについて、導入後の環境負荷がどう変化したのかをまとめて示した。
 
なお、いずれの家庭でも光熱費の変化についてみると、オール電化導入後のほうが大幅に減少していた。
 
5.3. 事例のまとめ
電気温水器を導入してオール電化にすることにより、光熱費は大幅に削減されるが、環境負荷は逆に最大5 割程度増加することが示された。
 
また、エコキュートであってもCO2 削減につながらない事例が出てきており、エコキュートの実性能がカタログよりかなり低い可能性がある。実働COP 調査に関する既存研究のうち、低い性能値を示している村川らの結果(実働COP1.82~2.13)を支持する結果となっている。
 
機器の性能としては、エコキュートを導入することで、環境負荷が低減されるとされてきた。
国もエコキュートなら環境負荷削減が確実であるとして、助成金を設定して、その導入を促進してきた。しかしこの家庭の事例で、エコキュートを導入した場合でも、家庭全体の環境負荷が増加する結果になったことは、多様な利用形態にエコキュートの性能が十分発揮できていない面も考えられ、これは環境負荷低減という前提そのものを問い直さなければならない大きな問題である。このようにエコキュートを聖域にすることなく、環境負荷についての実態を検討する必要があると考えられる。

3.11に関係なく、エコキュートの実働COPの低さを考えると、CO2 削減にはつながらないという結論のようです。
昨年や今年の全電源平均係数を利用したならば、もっと火力平均に近い値になるでしょうね。

エコキュート導入者に経済的メリットが出るように電気料金を設定してあるのですから、光熱費が安くなるのは当たり前ですね。 ただそれも今後の電気料金の値上げ次第ではわかりませんが。


我が家も「エネルギー効率が悪い」と言われるIHクッキングヒーターです。 CO2削減でいえば、ガスレンジに戻すべき(ガス管は台所に来ています)なんでしょうが、たとえ買い替えることになっても次もIHを選ぶと思います。

何が「正しい行動か」なんて状況によって変わりますし、みんなが一つの「正しい行動」に倣わなければならないなんて、一種のファシズムだと思います。 「オール電化」の人が肩身の狭い想いをする必要はまったくありません。

いろんな立場の人が、いろんな思惑で情報を発信しています(自分もその一人)。 出来るだけいろんな情報に接して、その中から自分が正しいと思うものを選び取るしかありません。