あの大量造反劇を招いたのは野田首相本人?:日経ビジネスオンライン
一体この国はどこに向かっているのだろうか――。そもそも誰のための法案なのか? そんな疑問が残る採決だった。こんな言い方をするのは申し訳ないが、野田さんが最後の最後まで理路整然とではなく情緒的に訴えかけているように見えたのは、私にとっては気味が悪かった。
本人は「理路整然」と説明しているつもりなんだと思いますよ。
でもさ、もし会社でプロジェクトの予算が足りなくなって、このままいくと頓挫してしまうというときに、「心から、心から、心から、お願いいたします」なんて言ったって、「ちゃんと数字で分かる資料で持って来い」と言われちゃうよね。
一方で、本来はリーダーであるはずの野田さんは、「民主党内で、十分に議論した」と語っていたが、なぜ消費増税にいま踏み切るのか、本当に明快に説明し尽くしただろうか。
少なくとも末端のフォロワーでもある一国民の私には、「待ったなしだ!」と訴えるに至った経緯がよく分からなかった。だから経済に詳しい人に解説してもらうのではなく、リーダーとしての野田さん本人から、どうしてマニフェスト(政権公約)を破り、「待ったなしだ!」と政治生命を懸けて消費増税の実現を目指すようになったのかを聞きたかった。だが、そうした機会がこれまで十分に設けられたとは思えない。
財務大臣だった昨年6月頃から、「消費増税」の実現を目指すようになったそうだが、なぜ、そう思うようになったのか? そうした考えに至ったプロセスを、野田さんは十分に説明できていたのだろうか。「消費税増税に政治生命を懸ける」、「不退転の決意で臨む」とやたらと口にするが、「なぜ、マニフェストに盛り込まず、代表演説の時にも言及していなかった消費増税をいま最優先するのか?」とい至極素朴な問いにはしっかりと答えていない。
世界情勢の変化に応じて、政策を変えなければならない必要が生じるということは理解できる。でも、変える場合には、「政治生命を懸けてまで変える」気持ちになぜ至ったのかを丁寧に説明しない限り、フォロワーには納得できない。
もちろん財務省とか官邸では資料的な裏付けはあるんだろうけど、それが国民に分かりやすい形で説明されているのかというと、そうとは思えません。 ビジネスでは、いくら詳細な説明資料を作ろうが、相手が一目見て把握できるようなものでなければ、目を通してもらえません。
次の内閣は、池上彰を広報官に任命した方がいいと思います。