家電-コラム-そこが知りたい家電の新技術-“高級扇風機”という新ジャンルを創った「GreenFan」ができるまで
我々のようなハードウェアメーカーはつい勘違いしがちなんですが、ユーザーが買うのはハードではなくてソフトです。ハードを買うことによって、得られる効果や効能に対してお金を払う。それこそを大きくしなくてはいけない。
その視点で扇風機を見ると、ハード的には風を送る機械ですが、ソフト的には涼しさを得る機械です。これは、同じようでいて実は違うんです。どっちを目的にするかで、ものづくりは全然変わってきます。
今までの扇風機は、風が人工的なので、結局、当たり続けられなくて、みんな首振りを使う。そうすると、風が届くのが一瞬になってしまい、結局涼しくなく、熱い空気をかき混ぜてるだけのものにしかなれなかった。我々は、「風」ではなく「涼しさ」を提供しなければいけないと思ったわけです。
じゃあ、涼しくて良い風ってどこに吹いているかというと、外に吹いている。 当時、たくさんの人に「自然の風と扇風機の風どっちが気持ちいい?」と聞くと、「自然の風」という答えが100%でした。ということは、みんなその違いを感じている。じゃあ、自然の風が出てくればいいじゃないのかと。まずはそこから解析し始めました。
自分のように「節電」という即物的な利益を期待して買う人は、バルミューダのお客さんにはなれないかもですね。
でも共感する部分もあります。
――大手メーカーと比べると、できないことも多いでしょうが、だからこそできることもあると思います
できないことを一言で言うと、大きな規模が必要な事業です。例えば、チップを自分たちで開発するのは、今の我々にはできません。でも、逆に出来ることも山ほどあるんですよ。端的に言えば、自分たちが信じたアイデアを、責任をもって製品化して、責任を持って世に問うことです。
事業というのはアイデアを実現するためにあると思います。1個のアイデアがあって、これを実現したら、世界が良くなるんじゃないか、あの人に褒められるんじゃないか、という単純な気持ちです。でも、それを本当のことにするには、数々の困難があります。必要な場合はお金を持ってきて、必要な場合は仲間を集めて、実現させて世に問うのが、事業の本来の姿だと思うんです。だからこそコアになるアイデアがとても重要だと思います。何しろ、その実現のために人生の多くの時間を使うのですから。
こういう「絶対価値」の追求というのは、ベンチャーでなければ出来ないのかな?