原発廃炉で電源4社が債務超過に

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原子力は民間企業では縮小できない:日経ビジネスオンライン

植田:のべ70時間ちかい議論は複雑な経緯をたどりましたが、端的に言うと、政府は脱原子力依存の前提として「40年廃炉、新規なし」と宣言しているのだから、それを数値に落とす必要がある。僕自身、そう発言しました。
 
現状の原発の稼動率は70%ですから、40年経った炉を廃棄し、新設しない場合、計算では2030年で依存度13%となります。つまり、「15%案」がこれに近い。それよりも早く脱原発に向かうのが「0%案」。目まぐるしい国際情勢などに対応できるよう、多様な電源が必要という理屈で、原発を一定程度維持するのが「20~25%案」です。

すんごく分かりやすいですね。 こういうふうに言ってもらえれば、国民の大多数は理解できるのに、マスコミのニュースを見ても「ワァワァ言うとります」くらいにしか聞こえません。

他にも面白いことがたくさん書いてあります。

植田:事故リスクは本来、コストに反映されます。空を飛んでいるジャンボジェット機にも損害保険は掛けられている。万一落ちても損害は保険でカバーできます。しかし世界中の原発が損害保険に入れない。なぜかというと、現時点で技術的に十分コントロールできていない。何千回動かしたら、どの程度の事故が起きて、どれだけ被害が出るというのが、はっきり言えないんやね。それがわからないと保険は組めない。保険料を設定できないから、損害保険の対象にならないんです。(中略)
 
つまり本来、原発は電力会社という民間企業では運営できないんですよ。国の援助があってこそ動かせるシステムです。「国策民営」というのは、そこを曖昧にしてやってきました。だから、今回の被災者の方々への損害賠償も、何だかぐちゃぐちゃして変なことが起きている。いまの状況では、ある程度以上は国が責任を持ちます、という話をせんといかんのやけど、財務省はいろいろ理由をつけて乗ってこない。だから、東電の生殺しみたいな、変なしくみになってるんやね。

破綻処理しても、企業活動は続けることができるのだから、法的整理するべきなんでしょう。
津波リスクを軽視して原発事故に至った責任は大きいですし、「東電憎し」という気持ちは分かりますが、国がケツを拭くしかないと思います。

植田:安全面では、うーん、驚愕することばかりでした。
 
関西電力と話し合ったとき、向こうは何メートルの津波に対して、どうするとか、技術論ばっかり喋るんです。それで、では事故が起こったときの体制はどうですか、と当然、こっちは聞きますよね。そしたら、驚いたことに「事故が起こらないようにします」という答えやねん。びっくりしたわ(笑)。
 
「答えになってない。それだけは、やめてくれ」と皆言いました。福島原発事故の最大の教訓は、「原発事故は起こる」ということや。だから起こったときの体制を整える。それは組織文化に根ざしています。でも変わっていないのよ。組織文化は変わらないまま、技術的にはいろいろやっています、みたいな話をされるわけやね。(中略)
 
植田:一番けしからんなと思ったのは、文部科学省のSPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)を使った事故のシミュレーションをやらないこと。大飯で。
 
山岡:えっ? そうなんですか。被害の予想を立てずに対策は講じられないでしょう。
 
植田:再稼働は政府が認めるとなっているわけだから、避難の方法とか考えてるはずやね。事故が起こったらこうなると予め把握できて、放射能の少ない避難路を検討できる。SPEEDIは、政府がやっているのだから、出せそうなものだけど、出さへん。福井県知事も言わない。(中略)
 
山岡:滋賀県知事はシミュレーション結果の公表で関西の経済界から凄い圧力をかけられた、と聞いてます。結局、政府が原発再稼働に踏み切った最大の理由は、電力需給の逼迫というよりは電力会社の経営問題ですね。
 
植田:そう。そこは、もはやはっきりさせたほうがいい。

酷い話だね。 「フクシマ」だけでは足りず、もう一箇所原発が爆発しないと「無条件降伏」しないのかな?

ところで「電力会社の経営問題」とはどういうことでしょうか?

山岡:6月13日に民主党の「脱原発ロードマップを考える会」の会合に資源エネルギー庁が提出した「廃炉決定の際の除去損、解体引当金引当不足額」というペーパーによれば、「原発が再稼働せず、廃炉が決まった場合、北海道から九州までの9電力会社と日本原子力発電の10社に発生する特別損失は総額4兆4000億円」。特別損失を計上すると、東京電力、北海道電力、東北電力、日本原電の4社は即座に債務超過に陥ります。廃炉となれば、安い電力の打ち出の小づちだった原発が、いきなり不良資産に変わるからです。民間企業が原発をやっている限り、破たんの危機を感じたら死に物狂いで動かそうとしますよ。(中略)
 
植田:ですので、「国家が原発を管理して、廃炉までいく。こっちで面倒をみます」という選択肢はありえます。(中略)
 
山岡:かつて国鉄の分割民営化で「国鉄清算事業団」が設立され、長期債務償還や余剰人員の再就職促進などを行いました。あのような法人に廃炉ビジネスの実業部門がくっついたようなものでしょうか。
 
植田:組織の形態については議論の余地はたくさんあると思いますが、不良資産化する原発の処理は急がれます。それと長期的には、電力・エネルギーシステム改革と電力会社の再生を連動させること。やはり再生エネルギーが鍵を握ると思います。

つまりはバブルの不良債権処理問題で、金融システム不安に陥っていたときと同じ状況なんですね。
不良債権の処理スキームの道筋をつけない限りは、うかつに「再稼働せず廃炉」なんて言えないということのようです。

ところで原発比率の高い関電は債務超過にならないんですね。 それだけ引当金を積んでいるのでしょう。