米国の「あらかじめ失われた10年」、欧州は20年か?

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米国は少なくとも5年、欧州は20年、経済低迷が続く:日経ビジネスオンライン

米国では、リーマンショック以降、不動産価格の下落によって住宅ローン返済の負担が重くなる一方、経済の中核を担う中間層の収入が減少することによって、家計のバランスシートが著しく悪化しています。その結果、米国のGDP(国内総生産)の約7割を占める個人消費が思うように伸びず、景気回復の重い足かせとなっています。(中略)
 
今現在、住宅を売り払っても借金が返せない家計が1100万世帯もあります。これは、住宅ローンを借りている家計の4分の1を超えています。住宅価格が上がらない限り、家計のバランスシートを改善する方法は、家計が地道な「節約」を続けるしかありません。だから、消費は抑えられ、景気も足踏みを続けることになるのです。
 
日本の歴史が示しているように、バランスシート不況が沈静化するためには、最低でも10年単位の時間が必要です。2008年の住宅バブル崩壊から2012年は5年目です。ということは、少なく見積もっても、あと5年は低迷が続くという見通しを立てざるを得ません。

それでも少子高齢化が進み、労働力の流動性が低く、企業・業界のスクラップ&ビルドも進まない日本と違って、ダイナミックな米国経済はなんとか復活するんじゃないかと期待してしまいますね。

問題は欧州です。

私は、欧州については米国よりも低迷が長引くだろうと見ています。欧州は「国(政府)のバランスシート不況」にあるからです。欧州の大半の国々ではこれまでずっと、国の収入に見合わない社会保障制度を維持してきたため、国の財務内容が著しく悪化してしまいました。リーマンショックはその異常な国の財務内容を炙り出したきっかけに過ぎないのです。たとえ、今後1~2年で収まるであろう債務危機を乗り切ったとしても、その後の実体経済には茨の道が待っています。欧州の財政再建、特に南欧諸国の財政再建はあと5年ではとても終わらないからです。(中略)
 
今まさに、欧州の銀行も日本と同じ過ちを繰り返しています。銀行が貸し渋りや融資の回収をすることで、企業は借り入れができず苦しい状態に陥っています。とりわけ深刻な影響を受けるのが、財務基盤の弱い中小企業です。先進国、新興国にかぎらず、雇用の中核を担っているのは中小企業です。多くの中小企業は借金返済を優先させるために、事業規模の縮小や人員の整理を進めていかざるを得ません。成長企業でさえも借り入れができないケースが増え、せっかくの事業や雇用を拡大するチャンスを奪われることになりかねません。つまり、実体経済の大部分を担っている中小企業の弱体化が進むのです。
 
その結果、欧州の雇用情勢は南欧を中心に悲惨な状況にあります。EU全体の失業率は10%超で高止まっているのに加え、25歳以下の若年層の失業率はその2倍の20%を超えています。債務危機に陥ったギリシャやスペインでは、若年層の失業率は50%を超えてしまっているのです。
 
雇用の流動性が高い米国とは違い、欧州では簡単に解雇ができない雇用制度を持つ国々が大勢です。したがって、企業は勤務年数の長い中高年層を解雇するのが難しく、若者たちの新規採用を減らすしか選択肢がありません。その影響で、日本と同じように、モチベーションが低い世代、夢や希望が持てない世代が欧州でも生まれつつあります。
 
このことは、将来の経済や社会にとって大きなマイナス要因となるでしょう。若者のモチベーションの低下は、将来の生産性低下を招き、国家の潜在成長力を引き下げてしまいます。欧州経済は「失われた10年」どころか、日本と同じく「失われた20年」になってしまう可能性が高いでしょう。

こういう状況だと国粋主義的な方向に走りがちです。 欧州各国で極右政党が力を持ち始めているのも、無関係ではないのでしょう。
ユーロが崩壊するのか、いっそ政治統合まで行くのか。 いずれにせよ今のような中途半端な統合ではダメなんだろうと思いますね。