インドネシアの労働者事情

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

「何でも平等にするとエリートがやる気を失う」:日経ビジネスオンライン

--技術職か事務職か、あるいは幹部候補生か否かによって、労務や教育の方針は違うのでしょうか?
 
山下:以前にもお話しましたが、職域が違うというより、階層によって分類し、大別した方が良いと考えています。インドネシアは階層社会ですから、与えられたポジションをそのまま受け入れ、各階層が階層毎に昇格や異動もなくそのままで交わることなく長く会社は運営されていきます。やり甲斐を昇進や成長に求めるのではなく、安定した雇用の維持と楽しい人間関係に求め、満足する人達が多い社会です。日本のように下から上へと順に昇格し、色々な部門に異動して経験を積み、最終的に管理職になることは一般的ではありません。もちろん、多くの日本人と同じように出世を望む人もいますが、中華系や高学歴の一部の人達だけです。

今やっている仕事がインドネシアの仕事なんですが、 まさしくこんな感じですね。 マレーシアでもそうでしたが。

この記事はいままで漠然と感じていたことが、とても明快に説明されてて参考になります。

従業員はざっくりと5つの階層に分かれます。1番上が経営者層、2番目が管理職層、3番目が事務職層、4番目が一般職層、そして5番目が幹部候補生層となります。まず4番目の層は、たとえば工場現場単純作業や清掃や荷降ろしなど、採用したその日から誰でもできるような業務を担当する人材層です。どんな人材を採用するか、いかに育成するかということよりも、マニュアル化や仕組み化を進めて、人が入れ替わっても影響のないようにしておき、かつ最低賃金を保障する水準で雇用するケースが多いようです。
 
3番目の層で実績を上げた意欲や才覚のある人材に対しては、将来的に2番目の層に昇進できる「各職場のエース候補」としての社内外の教育を実施し、育成を施します。かつては、大学卒とそれ以外との格差がかなり大きかったのですが、育成が進むと学歴がなくても管理職を狙える土壌が整いつつあります。ですから、各年代・各部門に複数の有望株を競わせて「特進」させるなど、「成功モデル」となるような「模範生やスター」をつくっておくことで、周りの若手に「会社が求める人材の手本」とし、「自分も、あんな風になれるかもしれない」とキャリアプランを思い描けるようにリードしてやるといいでしょう。その延長線上に2番目の管理職や1番目の経営者層につながる人材を発掘し、育成し、登用します。

ウチの会社は工場長だろうが同じ食堂で飯を食うのですが、先日インドネシア出張から帰ってきた先輩に聞いたところによると、管理職と一般で食堂が分かれてメニューも違ったそうです。
フィロソフィー的にはどうなんだ?という気がしなくもないですが、日本人の論理が全て正しいというわけでもないですしね。

ところで自分が接するのはエリート社員ではなく、現場スタッフからマネージャーくらいまでの層ですが、せっかく育てても転職してしまうんですよね。

--いわゆる「ジョブホッピング」も気になります。ローカル人材のモチベーションを高めるような、指示命令の出し方、報酬の与え方などのポイントはありますか?
 
山下:以前も話しましたが、「ジョブホッピング」は100%避けられるものではありません。ですから、ルーチンワークが中心の最下層なら3~4割程度までであれば仕方がないと考えています。その上の層で1~2割、さらに上の層なら1割未満と、経営幹部に近づくほどジョブホッピングの率が下がって行くような制度や風土を作ることが大切です。
 
--手厚い福利厚生が、ジョブホッピング防止に一役かっているようですね。
 
山下:日本では当たり前になっている社員向け融資制度ですら、新興国では驚かれますよ。同じ外資でも欧米系の企業なら、「すべて給与に込み」という方法が多いようですが、終身雇用的な「長くみんなでやっていこう」という気持ちが伝わる日本的な良い制度だと思います。

なるほどねー。 従業員販売なんかはいい制度だと思いますね。 会社の信用供与があれば、ローンもしやすくなりますし。

--マンダムの海外駐在は5+α年が基本とうかがいました。日本本社からの人材とローカルの人材との棲み分けは、どのようにお考えですか?
 
山下:理想だけ言えば、本社が全ての事業計画や方針を決定し、現場の実務は企業運営も含めてすべて現地人社員で賄えることが一番いいのかもしれません。ですが、それは理想であり、本社に相当なレベルでの各国の情報があつまり、それに対する理解がなければ難しいでしょう。現場の運営を100%現地人社員で実行すると日本企業としての思想や理念、外資としての企業風土が現地の顧客や生活者に伝わらなくなると思います。
 
さらに、本社からのオフィシャルな情報だけで、方針や政策の緊急度や必要度合いを正確に受け止めて理解すことは日本人トップでも難しい。そこで現実的には、トップに日本人、ナンバー2に現地人社員、できれば長期勤務暦のある生え抜きを置くというのが実践的でしょう。他にも、お金に関わる部署など管理上重要な部署のキーマンには日本人を配置するケースが多い。また、戦略を企画する部門は本社との刷り合わせが不可欠ですので、日本で考えて現地では日本人スタッフがリーダーとして展開し、戦術的なことはローカルに任せるという線引きがしっくりくると思います。(中略)
 
かつては日本と新興国との国力の差が歴然としていたので、ある程度の人材なら行かせても「日本人の言うことだから」「とりあえず従がおう」と思ってもらえましたが、最近はそこまで圧倒的な差はありません。東南アジア各国では自意識に目覚め、愛国精神を持った社員が増えてきており、特に高等教育を受けた若い世代は自立心(注:独立心ではない)から理論的な説明と的確な戦略とフェアな評価を求めています。本社から派遣する人材のレベルに対する欲求も以前に比べるとかなり高くなっており、日本国内のエース級の社員を、たとえば、経験豊富な部長クラスと柔軟性の高い若手をコンビで送り込むのなどの策が必要になるでしょう。
 
若いうちに海外に駐在し、言葉や国民性や文化・風習、季節も商戦期も、何から何まで、全く分からない土地に腰を据える。そこで、ローカルの人たちと「生活者発・生活者着」「お役立ち」などの理念を共有して、現地で商売をやり抜く。こうした経験は、日本ではもちろん他の国に赴任しても必ず生かせます。マンダムでは、そうした実力をつけた人材が育っています。

羨ましいですな。