2012年の最強AVアンプは、ソニー「STR-DN2030」

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価格.comマガジン 2012年の最強AVアンプ、ソニー「STR-DN2030」の“凄さ”とは?

「STR-DN2030」の最大の特徴は、コストパフォーマンスの高さにある。今回の体験会でプレゼンテーションを行った、ソニーの金井隆氏は、「STR-DN2030は、価格を抑えながらも、製品の中身はTA-DA3600ES以上に仕上がっている」と胸を張った。それもそのはずで、「STR-DN2030」は、「TA-DA3600ES」とほぼ同じ内部レイアウト構造を採用。シャーシとパワーアンプは同一となっている。トランスも「TA-DA3600ES」と同じサイズのものを搭載。さらに、最上位モデル「TA-DA5800ES」とほぼ同じネットワーク基板とHDMIインターフェイス基板を採用し、最上位モデルゆずりの機能を多数備えているのがすごいところ。代表的なところでは、5.1chのハイレゾ音源の再生に対応するネットワークオーディオ機能があげられる。(中略)
 
最近のAVアンプは、価格の下落が激しく、ボリュームゾーンは5万円を切る価格帯となっている。ひと昔前ではミドルクラスの機能であったものがエントリーモデルにも搭載されるようになってきており、コストパフォーマンスの高さから安い製品が選ばれているのだ。そういった市況の中で、ソニーは、戦略的に「STR-DN2030」を開発。金井氏は「STR-DN2030」について、「営業サイドから実売59,800円で販売できるAVアンプを開発してほしいというオーダーがあり、それに応える形で生まれたモデル」と説明した。その結果、ミドルクラスの製品をベースに、最新の機能性を持つ低価格モデルが誕生したのである。こういった製品に対しては、よく「クラスを超える」という表現を使うが、まさにその言葉がピッタリだ。価格的にはエントリークラスに近く、性能・機能的にはミドルクラスからハイエンドの間に位置するような高コストパフォーマンスモデルとなっている。

映画をよく観る人ならこういうAVアンプを買うんでしょうが、我が家はせいぜい嫁が連ドラ観る程度だしなぁ。
でも昔の自分なら買ってたでしょうね。

興味深かったのは「はんだ」の話。

金井氏は今回の体験会で、「STR-DN2030」など2012年モデルのAVアンプでは、部品の固定で使っている“はんだ”にもこだわったことを紹介した。これまでもソニーは、2003年に自社開発したはんだを採用してきたが、2012年モデルからは、第2世代の高音質はんだを採用。「M700ES-FPS」という型番の入った新開発のはんだとなっている。
 
はんだは、基本的には鉛とスズの合金であるが、現在は、環境保存のための鉛規制により、鉛を使わない無鉛はんだが使われるようになっている。オーディオ機器も2003年を境にして、いっせいに無鉛はんだが導入されるようになったのだが、金井氏は「無鉛はんだによってオーディオ機器の音が悪くなった」と言う。「たかがはんだ」と思う方もいるかもしれないが、音質にこだわるソニーは、主流の無鉛はんだはオーディオ機器の音に悪影響を及ぼすために使用できないと判断し、高音質なはんだを自社開発したのである。「ないものは作る」というのは、実に同社らしいエピソードではないだろうか。
 
「無鉛はんだは、スズ、銀、銅、ビスマスなどの組成で作られるが、美しい組成のものは特許の問題で使えないという事情があり、それとは配合の異なるものが主流になった。ただ、主流の無鉛はんだは、結晶構造の違いにより音に悪影響を及ぼすことがわかった。これでは使えないということで、ソニーは2003年に自社ではんだを開発し、それを使用するようにした」(金井氏)
 
ソニーが2003年に開発した第1世代の高音質はんだは、スズ銅系の単純な組成のもので、ひたすら“音のよいスズ”を探して開発されたとのこと。金井氏は、「世界中のスズを50種類以上試した。鉱山ごとに音が違う。不純物で音が変わる」とスズによる音の変化を紹介。結果、インドネシアにある鉱山のスズを採用したのだが、ポイントは、鉱山の閉山リスクを考慮し、第1世代の高音質はんだの開発を終えてからも「なぜこの鉱山のスズの音がよいのか」という研究を6年間続けたことだ。研究では、スズの成分を調べ、アンチモン、ビスマス、鉄などの微量元素を解析。高純度のスズ(4N)をベースに、不純物や微量元素を添加し、実際の音を聴感でチェックし、いくつかの元素を特定したという。結果として、鉱山が閉山になってしまい、研究の成果から第2世代の高音質はんだ「M700ES-FPS」が生まれたというわけだ。
 
「M700ES-FPS」は、高純度のスズ(4N)に、第1世代の高音質はんだの元素解析から判別した微量元素を添加して製造。結果として従来よりも高音質なはんだに仕上がったとのことだ。音質的には、より澄み切った音がするとのことで、その理由については、高純度のスズ(4N)を使っているために「結晶状態がよく電流が流れやすいこと」と「銅との合金層がキレイなこと」が大きいと紹介。さらに、金井氏が「もっとも大きなポイント」と説明したのが「スズの分子共振が少ないこと」だ。金井氏は、「スズはピンと刺が出て、これがジャギジャギと鳴く。サ行の音がツァ行になる。使用するはんだによっては、たとえば、吉幾三さんの『雪国』の“すきよ~”のフレーズは、“つぅきよ~”と聴こえてしまうこともある」と説明した。
 
金井氏が裏話として紹介したのが、最上位モデル「TA-DA5800ES」の開発段階でのエピソードだ。「TA-DA5800ES」は、最初の試作機では「音が硬かった」という。その原因がすぐにはわからなかったのだが、吉幾三さんの『雪国』を試聴した際に、サ行の音の濁りから「はんだが違う」と判断。調べてみると、試作用に別のはんだを使っていたとのことだ。金井氏は、使用するはんだによってそのくらい聴感上の違いが出るとした。

無鉛はんだなのに、訛がひどくなるんですね。 面白いなぁ。
このこだわりこそが、ソニーがソニーたる所以でしょう。