小寺信良のEnergy Future(13):「元が取れない太陽電池」という神話 - MONOist(モノイスト)
運転中の燃料消費まで見てしまうと、何らかの地球資源を消費する発電施設は、全く元を取ることがない。つまり本当のペイバックタイムは、一生やってこない。原子力発電の場合は、運転時にCO2を排出しないため、CO2PTの値が低くなり、これを根拠にクリーンエネルギー(ゼロエミッション)などと呼ばれた。だが燃料の精製や使用済み燃料の処理まで含めると、EPTが何年になるのか全く分からない。現時点で使用済み燃料のほとんどは、海外の再処理工場に送り出しているだけである。最終処分先も全く決まっておらず、EPTの計算に入れようがない。
一方太陽光発電施設の場合は、従来方式のEPTやCO2PTで評価可能だ。なぜならば、運転中には燃料の消費が本当にゼロだからである。火力・原子力の消費燃料を無視したEPTと、太陽光発電施設との比較は、そもそも意味がない。しかし、過去に発表された資料を根拠に、太陽光発電は火力・原子力よりも環境負荷が高いという流説はいまだ根強く残っている。
だいたい誰かは想像がつきますが。
その元凶は「オール電化擁護」で物議を醸した電力中央研究所が出したレポートなんだそうです。
電力中央研究所(電中研)の調査において、太陽光発電のEPTが異様に長く出ている理由は幾つか考えられる。1つは、当時の技術水準(調査は1990年)では、太陽電池製造に現在の2倍以上のSi(シリコン)が必要であった。さらに当時は太陽電池の生産規模が小さく、量産によるコスト減や環境負荷減の効果が得られていない。
また太陽電池を支える架台の見積もりも不十分だ。当時は本格的なメガソーラーの稼働実例がなかったため、同じようなものだろうということで太陽熱発電用の頑強な架台のコストを参考にして試算している。
故意に太陽光発電を不利にしたという訳ではないようです。
近年の数値はどうなっているのだろう。太陽光発電のペイバックタイムを調査した例として、みずほ情報総研が2009年にまとめた「平成19年度~平成20年度成果報告書 太陽光発電システム共通基盤技術研究開発 太陽光発電システムのライフサイクル評価に関する調査研究報告書」(PDF)*4)がある。PDFで271ページにも及ぶ膨大な検証結果だが、太陽電池の全方式について、あらゆるコストを算出してEPTとCO2PTを割り出している。
これによれば、量産効果および電池の種類で違いがあるが、年産規模10MWでEPTは1.2~3.1年、CO2PTは1.7~3.8年。年産規模100MWではEPTが0.9~2.1年、CO2PTが1.4~2.4年となっている(図4)*5)。(中略)
量産効果による製造負荷ダウンという点では、最近量産が始まったばかりのCIS(CIGS)が、さらにEPTを短縮するとみられている(関連記事)。一方、Si系は、現時点でも量産規模がかなり大きいため、これ以上の量産効果のマージンは少ないだろうと予想される。
非シリコン系の方が製造エネルギーが小さいのでEPTも短いですね。