全国の課長さん、あなたに「最後まで逃げない部下」はいますか?:日経ビジネスオンライン
押井:敏ちゃんほど人をいいように使った男はいないからね。テーマを持っている人間は、テーマがない人間を好きに使っていいんだという考えだから。(中略)
本人が常日頃からそう言ってるんです。「あいつらは、放っておいたらテーマがないんだもん。俺はテーマがあるんだから、あいつらにテーマを与えてやって自由自在に使ってどこが悪い」って。
--利用して申し訳ないどころか、利用してやったんだから感謝してほしいぐらいのニュアンスですね。(中略)
押井:鈴木敏夫という人間は、たぶんかつては徳間康快さん(故人・徳間書店初代社長。スタジオジブリの社長でもあった)に同じように扱われたんだと思うよ。そういうやり方を見てきたからこそ、今、同じ事をやれてるんです。昔の人間、戦後のオヤジたちというのは実はみんな同じ構造で生きてきたんです。
自分のテーマをどうやって実現するか、そのために誰が利用できて、誰をどう動かすのか、そのために何をするのか。テーマを与えなければ人は動かないし、そうするように追い込まなければ誰も動かない。あるいは、退路をあらかじめ潰さなかったら誰もやらない。
昔のホンダではそういう構造を「2階に上げて梯子を外し、下から火をつける」と表現していました。
いまブラック企業が問題になっていますが、似て非なるものですね。
他にも名言があります。
押井:自分がなにか成し遂げたいという時に、女にモテるということはさしたるメリットを生まないというのは、男ならたぶん納得できると思う。女にモテるということは、付加価値というよりもそれ自体が本質的な価値だから、特殊な職業を除いては「利用するべきもの」にならないんだよ。
世の中にある職業で女にモテるということがメリットになるってことはたぶんそんなにないと思うよ。逆に男に嫌われるから、むしろデメリットにしかならない。「アイツは女にモテる」と言ったらね、だいたい男は好感を持たないから。
そうかもしれないですね。 あと「若く見える」というのも、むしろデメリットになるかも。
しかし「女にモテるというのは付加価値ではなく、それ自体が本質的な価値」って、飲んでるときなんかに人を煙に巻くのに使えそうなフレーズですね。
押井:職業人は誰でも自分の技術にはプライドを持ってるわけです。あるいは仕事以外の部分で自分の生きる上の意地みたいなものは誰でも持っている。
で、仕事だからと辛いこと、理不尽なことを強制したとしましょう。まあ、だいたい誰だって嫌がって反発しますよね。
--それはそうでしょう。
押井:だけどそこで「やってもやらなくてもいいんだけど、あなたの生き方としてはどうなのよ?」とか「技術者としてのあなたはそれをやらないことについてどう思う?」とかいう言い方をすると、必ずその人のプライドが出てくるんです。つまり、自分の意地を見せようとする。それは誰でも本能的に持ってる部分なんです。
それを狙ってやるとミエミエであざとくなっちゃいますね。 やっぱり本人のキャラが大事かと思います。
押井:職人とか技術者ってみんなそうなんだけど、あの人たちは横しか見てないから上下関係で世界ができてない。仲間が、同業者が、同じ職人が自分をどう評価するかっていう価値観なんです。そういう意味で言えば、技術を持ってる人間というのは自分のスキルで自己実現したい、スキルの高さを世の中に納得させたいという人間の代表なんだよ。
警察官だろうが自衛隊員だろうが実は同じ。だから「そこまででいい。この事件から手を引け」って言われて本当にやめちゃう刑事もののドラマはないわけ。必ず反発する。「これは俺のヤマだ」ってさ。でも冷静に考えたら、アンタのヤマのわけないでしょう(笑)。(中略)
要するに一番大事なのは、情報力を駆使して、命令も強制もしないで、ただ選択肢を与えないという、そういう追い込み方ができること。そしてもうひとつは最終的に自分で責任を取る、ということなんです。そりゃそうだよね、自分の首を賭けずに部下の首だけ賭けさせたって誰も動くわけないんだから。
ということです。 中間管理職は大変ですな。