円安のメリットがでるのは供給能力に余剰があるとき

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アベノミクスに4つの誤算、円安のデメリットが顕在化:日経ビジネスオンライン

河野:まず、前提として、私たちは日本の潜在成長率が大きく低下していること、そして、経済のスラック(供給能力の余剰)がほとんどなくなっていることを認識すべきです。
 
多くのエコノミストが潜在成長率は1%弱と試算していますが、私は0.3%に過ぎないと分析しています。しかし、2013年の実質成長率は大盤振る舞いの追加財政や消費税の駆け込み需要の影響もあって2.3%にもなりました。その結果、急に人手や設備が足りないということになった。
 
過去20年、総需要不足だけではなく、実は供給能力も低下していました。つまり、潜在成長率が0.3%しかないのに、その8倍も成長したものだから、人手不足などが一気に顕在化したのです。

個人的には民主党政権の不作為による超円高から脱却した意味で、アアベノミクスは大変有意義であったと思います。

ただリーマン・ショックからの4年間で、製造業の多くは海外に生産を移しています。 円高の津波が何度も押し寄せたことで、今さら「円安にしたので輸出を再開してください」と言われても、はいそうですかとは言えないでしょう。

河野:ただし、電機セクターの生産能力の低下は、昨年の段階で既に分かっていました。誤算だったのが、自動車セクターの生産が回復していないことです。北米では日本車が売れているのに、輸出が伸びていません。日産自動車やホンダがメキシコに工場を作るなどしたことから、国内生産が落ちているからです。部品についても、中南米から買う割合が高まっています。(中略)
 
実質ベースで円安はプラザ合意当時の水準にあります。それほど円安が進んでいるのに国内生産が増えないのは、政府や日銀にとって誤算だったでしょう。
 
実は、国内生産を抑制するきっかけになっているのは、欧米がバブルで円安も加速した2006~2008年頃に、電機セクターが国内生産を拡充するという誤った経営判断をした教訓があります。この教訓が広く輸出企業に広がっており、一時的に円安になっても生産を増強しようという機運は高まりません。
 
そもそも、海外に生産を移転するのは、国内で安価な労働力を調達できなくなったからです。マクロ的に見れば、モノの生産からサービスへと労働力が移動しているのです。このマクロ的な流れを、一時的な円安で変えるのは難しい。

自動車メーカーの生産ラインの1/3は期間従業員ですが、人集めには苦労しているようです。 「モノからサービスへ」というのは確かにあるのかもしれません。

--円安が逆効果ということになると、アベノミクスそのものの前提が揺らいでいるということにもなりませんか。
 
河野:アベノミクスの一番の功績は円安誘導でした。アベノミクスが始まった当初は、確かに円安のメリットはありましたが、昨年くらいからデメリットの方が大きくなってきています。
 
実は、これは重大な意味を持ちます。円安のデメリットが大きいということは、円安に誘導する金融政策が日本経済にとって逆効果をもたらすということです。「今すぐ利上げをしろ」とは言いませんが、明らかに追加緩和はすべきではありません。異次元緩和(QQE)の手仕舞いを議論する段階に来ています。

「円安誘導」(とは認めていませんが)はあくまで手段であり、アベノミクスとは「成長戦略」なのだと思います。 手段と目的を取り違えては本末転倒ですね。

成長率を高めるには、潜在成長率を高めるしかありません。潜在成長率が下がっている状況で、財政出動によって完全雇用状態となればインフレは加速します。そうなれば、名目賃金は上がったとしても、実質賃金は下落してしまいます。まさに(景気悪化とインフレが同時に進行する)スタグフレーションの状況に陥るわけです。(中略)
 
--潜在成長率を高めるために、何をすればいいのでしょう。
 
河野:アベノミクスの一番の問題は、デフレ脱却と成長が大切だという正論を掲げることで、解決しなければならない喫緊の課題である社会保障問題の解決を先延ばしにしてしまったことです。
 
先ほど資本ストックが全く伸びていないとお話ししましたが、資本ストックの原資となる国民純貯蓄が、社会保障費によってほとんど食われてしまっている状況にあります。つまり、社会保障改革をしなければ資本ストックは伸びず、潜在成長率は上がらないわけです。
 
ただし、潜在成長率を高める努力をしたとしても、劇的に変化することはないでしょう。そもそも私たちは、低成長時代にあった経済の仕組みを作らなければならないのです。

最後のところは意見が分かれるようですね。

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2013年後半に、潜在成長率に規定される実質金利が長期的に低下しているなどの議論が活発になったが、最近の債券市場のラリーをうけて、これを「後付けの解釈」として使う議論が散見されている。
 
長期にわたる経済成長の低下は、実際にバブル崩壊後の日本で起きたが、これをもたらしたのは供給側の問題というより、金融政策を中心とした総需要安定化政策の失敗が相次ぎ、デフレ⇔総需要抑制の悪循環から抜け出せず、長期にわたって総需要が抑制され、経済成長率の低下をもたらした面が大きかった。つまり、潜在成長(供給側の問題)というよりも、「政策対応の不出来がもたらした人災」ということである。
 
だからこそ、アベノミクスの第一の矢である、金融緩和策はもっとも効果を発揮しているのである。こうした意味で、欧州がかつての日本と同様の道筋を辿るかどうかは、ECBの政策対応次第である。

個人的には貿易収支がプラマイゼロになる水準が、為替相場として望ましい目安になるんじゃないかと思いますけどね。 95円/$くらいがちょうどいいんじゃないの?

確かに自動車メーカーなど一部の大企業は巨額の利益を上げていますが、それが取引先や従業員にちゃんと分配されているかというとそうでもありません。 かつてゼロ金利で銀行にゲタを履かせて儲けさせたように、今の円安はトヨタやホンダなどにゲタを履かせているだけです。

9月に内閣改造するらしいですが、財務相なども入れ替えて政策の転換をすればいいんだけどね。 ムリか。