安保法制が嫌なら、憲法改正して核武装する?

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「圧力? ないよ」田原総一朗さん、朝生ドタキャン騒動と安保法制を語る

――そうですね。「まずは憲法改正からなんです」とアメリカには説明できないものなんですか?
 
いや、改正できれば言うでしょう。でも、改正できないわけだから。
 
日本は大矛盾なんですよ。大体、今まで日本は自国の安全保障を考えたことがあるのかと。やっぱり日米安保条約でアメリカが日本を救ってくれるということで。たとえば猪瀬直樹は、「日本はディズニーランドだ」と言っている。
 
――どういうことですか?
 
管理とか警備は全部アメリカに任せて、中でゲームを楽しんでいると。核反対、核廃絶といいながら、日本はアメリカが核を持ち込んでいることは百も承知。アメリカの核の傘のもとで、核廃絶なんて本当に虚しいことで。今まで日本人は、そういう根本的矛盾に対して対応しようとしなかった。
 
じゃあどことも組まずに自己防衛ができるのか? と。誰もできると思ってはいない。自衛するには核兵器を持たなきゃダメだし、今の10倍くらい軍事力を強めなきゃいけない。「自分の国を自分で守れる」と思っているのは世界でアメリカと中国くらいのものでしょう。イギリスもフランスもドイツも、自分の国を自分で守れると思っていないから、NATOに入っている。これは完全な集団的自衛権ですよ。

お花畑でのほほんとしていたい気持ちは皆同じですが、現実としてそれが許されるかというのは別問題ですね。

結局、本質的な議論をしないから「わあわあ言うとりますが、お時間になりました。採決です」ということになる訳ですね。

――切り込もうとするメディアもあるけど、不十分ですか。
 
25日の毎日新聞の社説でも「この法案を廃絶しよう」と言ってる。やめて、じゃあどうするの?
 
対案がないんだよ。たとえばこの前の選挙で、野党は全部、アベノミクスに反対と言うわけ。だから僕は野党のすべての党首に会って質問した。もしアベノミクスに批判するなら、じゃあカイエダミクスを言えよと。ワタナベミクスを言えよと。あるいはハシモトミクスを言えよと。どこも出てこない。対案がない批判なんていうのは通用しないんですよ。
 
メディアは権力を監視する機関だから、権力に批判的でいいと思う。でも、僕はある時に考え方が変わったんですよ。今まで、3人総理大臣を失脚させたわけだ。海部俊樹さん、宮沢喜一さん、橋本龍太郎さん。でも、こんなことやってていいのかなと思った。やっぱり相手に突っ込む時には対案を持たなきゃいけない。(中略)
 
――そうすると、憲法学者が違憲だと言った今の状況でも、田原さんはこの法案はもう通っても仕方がないな、という思いですか?
 
だから、通さないというのにリアリティがないんだよ。もっと本気の討論をすべきだと思っている。自民党に言いたいことはいっぱいある。僕はやっぱり、もう少しアメリカにきちんとモノを言えるようになるべきだと思う。

はっきり言って現在の議席数を前提にすれば、首相が公約した法案が通らないという状況はまず考えられないですね。 いい悪いではなく、それだけの議席数を与えたのは他ならぬ日本国民なんですから。

――仮に法案が通らなかった場合、どういう影響があるでしょうか?
 
日米関係が悪化するでしょうね。それを一番恐れているのは日本政府じゃないの? やっぱり戦後70年、日本が戦争もしないで安全でいれたのは、日米関係でしょう。そのアメリカが、日米安保条約を解消すると言ったらどうするのか。
 
――それは困るから、違憲といえども、解釈でなんとかしようと。
 
そう、政府はね。だから、実際は公明党と結んだ新三要件に従うと、本当は個別的自衛権の延長なんだけど、それを集団的自衛権と呼んで、アメリカに納得してもらおうとしているわけだ。
 
――新三要件がついていれば違憲じゃないと。
 
いや、自衛隊がそもそも違憲だから。
 
だって、今の憲法ができた時日本は非武装ですからね。非武装前提の今の憲法が69年も続いているっていうのが異常な状態だよね。
 
――そうですね。そこは、戦後日本のグレーな部分。

そもそも「違憲」な自衛隊を、屁理屈で「合憲」と解釈している現状に矛盾の根がある訳で、個別的か集団的ななんて話は本質的でもなんでもない。 枝葉の話です。
そこを「グレーな部分」で片付けてきちんと憲法との整合をとってこなかったツケがいま表面化しているだけでしょう。

社会党や共産党が反対するから憲法改正できなかったんじゃないと思う。自民党が反対だったんですよ、憲法改正に。
 
――なんと、自民党が。
 
この憲法があることが都合よかったんですよ。
 
――自民党というのは憲法改正が党是ですよね。
 
だけど自民党が憲法改正したくなかった。
 
――どういうことですか?
 
つまり、「弱者の恫喝」。この憲法があることを自民党は逆にうまく使ってきたんだよ。宮澤喜一、知っているでしょう? 彼は、「日本っていう国は自分の体に合わせた服を作るのが下手だ。でも、押し付けられた服に体を合わせるのが実に上手い」と。憲法のことを言ってるんですよ。この憲法は明らかに、GHQが日本に押し付けたんです。押し付けられた憲法に体を合わせるのが実に上手い、と。
 
たとえば、佐藤栄作内閣の時に、アメリカが「自衛隊もベトナムに来て一緒に戦ってくれ」と言ったわけ。アメリカの言うことは断れない。だから佐藤さんは「当然一緒に戦いたいと思う。でもあなたの国がくだらない憲法を作ったから、行くに行けないじゃないか」と、断る理由に使ったわけ。
 
小泉純一郎がイラク戦争が始まった時もそう。ドイツやフランスはイラク戦争に反対だったんだよ。そうしたらブッシュが「じゃあ自衛隊もイラクに来てくれよ」と言った。そうしたら小泉は「喜んで行く。しかしあなたの国がくだらない憲法を作ったから、行くと言っても水汲みにしか行けないよ」と。「弱者の恫喝」を使ってきたんだ。

おおー。 いいこと言うね。 久しぶりに切れ味のいい田原総一朗を見たな。
三宅先生とかハマコーとか元気のいい人がいなくなっちゃって、最近は同じハゲでも訳のわからん作家が放言してたりで気分悪いわ。

たとえば、集団的自衛権を法案で通しておきながら、行かないとかね。今まで、自衛隊の幹部たちに何度か僕の番組に出てもらったけど、幹部がみんな「今の法律じゃ自衛隊は戦えない」と言うわけ。なんで戦えないかわかる?
 
――憲法9条?
 
いや、憲法は関係ない。彼らが守らなければならないのは自衛隊法ですよ。
 
フランスとかイギリスの法律は、ネガティブ法なんです。「何々をやってはいけない」と条文に書いてある。逆に言うと、やってはいけないと決められた以外のことはなんでもやっていい。
 
でも、日本の自衛隊法はポジティブ法。「これはやってもいいですよ」と書いてある以外のことは全部やっちゃダメなわけ。だからポジティブ法では戦えない。
 
自衛隊は戦うためにネガティブ法にしたいわけ。僕はこれに反対。戦えない自衛隊だから平和なんだ、と。軍隊っていうのは戦えれば戦っちゃうの。そのために訓練しているわけだから。これはもう、戦争をしている世代はみんな知っている。

憲法より自衛隊法の縛りが有効というのも面白いですね。